新刊紹介

『総合商社の本質:「価値創造」時代のビジネスモデルを探る』

垰本 たおもと 一雄 かずお (ABIC会員、元三井物産)著
発行所:白桃書房 定価3,700円+税

 私は1980年代「商社冬の時代」に、三井物産に勤務した経験を持っている。その頃の実感としてあるいは現在においても、総合商社の機能の本質は明確な形では社会において理解されていないのではないか、と考えてきた。
 この問題意識から、2017年3月に完成した博士論文に一部加筆修正して、2018年3月に本書を出版した。
 内容は、近年研究が進む価値共創マーケティングの理論に基づく枠組みで総合商社の働きを見ると、その機能の本質は、「ビジネスを創造することである」と規定できる、とするものである。実はすでに総合商社自身によっても、あるいは研究者の見解としても、このことはコンセプトとして語られてきたのだが、それを理論的な枠組みによって、事実を基に全体構造として整理した研究はなかった。
 本書にて総合商社が何をしているのかを、現実的にそして明快に説明する方法を提供できたのではないかと思っている。結論については、各総合商社からも参加いただいている、専修大学・田中先生主催の「商社研究会」の場で、説明し議論していただいた。
 今後は、皆さまと共に研さんさせていただいて、内容をさらに掘り下げ、海外に対しても合理的に説明できるようにしていくための、基礎的研究を深めていきたいと考えている。「このようなビジネス創造の事例があるが、深く研究してみてはどうか」などと、ご提案をいただけるなら幸いである。