米国の自宅にて部門間異文化交流(前列右端が筆者)
ABICの大学支援活動の一環として2018年から文化学園大学服装学部ファッション社会学科でグローバルマネジメントの英語講座を担当している。
文化学園大学は「新しい美と文化の創造」を建学の精神とし、服装学・生活造形学のパイオニアとして独自の教育理念を培っている。さらにグローバル教育を目指し、アジアやヨーロッパからの留学生を受け入れ、国際社会に貢献できる人材の教育にも注力している。
IBMの研究開発部門出身の私は、留学と駐在を含めて米国に合計9年滞在し、異文化交流を体験した。さらに欧州、豪州、そして中国や東南アジアなど20ヵ国に出張し海外の研究機関や開発部門と英語で交渉に臨んだ。また、地球規模で顧客を訪問し、私が開発した商品の使い勝手や新機能への要望を聞き、次期製品計画に役立てた。その国際ビジネス経験で得た知見をテキストとして独自に作成し、授業の主教材とした。
対象は経営学部の学生ではなく服装学部の学生なので、授業の目標は達成可能性を考慮し、次の三つとした。
1.グローバル経営の多様な課題の解決策を考えられるようになる。
2.課題や解決策をわかりやすく英語で説明できるようになる。
3.異文化の違いを理解し、コミュニケーションできるようになる。
また、アクティブラーニングにより学生に発言を促す機会を増やすよう心掛けた。
授業の進め方として、製品開発で不可欠だったPDCA手法を取り入れ、授業の品質向上と学生の理解度定着を目指した。具体的には、全授業のシラバスをあらかじめ丁寧に説明し(Plan)、毎回の講義を傾聴させ、自分の考えを発表させ(Do)、翌週の小テストにより理解到達度を確認し(Check)、理解度が不足している内容に関しては講義で補足(Action)した。
私が担当した6回の授業のシラバスは次の通りで、全て私が在職時に実務で経験した内容だ。
Unit-1:Global Management Overview(グローバルマネジメント概説)
Unit-2:Global Business Strategy(グローバル事業戦略)
Unit-3:Market Research and Technology Research(市場調査と技術研究)
Unit-4:Product Development and Project Management(商品開発とプロジェクト管理)
Unit-5:Manufacturing and Logistics(生産と物流)
Unit-6:Marketing and Sales(マーケティングと販売)
学生は10人弱の少人数であり、日本人の他にも中国や韓国からの留学生が含まれている。多様性に対応するために、自己紹介してもらった時に全員に英語のニックネームをつけてもらい、授業中はその名前で呼び合った。教師からも、クラスメートからもニックネームで呼ばれると親近感が生まれ、「共同体」意識が芽生える。これは教師にとって大変有益であり、大教室での授業との大きな違いだ。
教師として一番困ったことは欠席者への対応だった。この授業は4年生が対象であり、授業と就活の時期が重なった日もあった。欠席しても学生たちの学習意欲は高く、インターネットを介してテキストや小テスト問題を送り、自宅学習を促し、小テスト解答用紙を送り返してもらった。このような方法をとることで、欠席しても翌週までに授業内容の継続性が担保できた。
6回の授業終了後に学生に満足度調査をしたら「大変満足」という評価を頂き、講師冥利に尽きた。また講座担当の教授からも「内容も教え方も余人をもって代えがたし」と最大級の賛辞を頂戴した。
最後に、このような機会をつくってくださったABIC大学講座担当の増井コーディネーターはじめ関係者の皆さまに謝意を表したい。