活動会員のレポート

日本海港湾「伏木富山港」の発展

伏木富山港国際物流アドバイザー  花岡 はなおか 輝年 てるとし (元 パナソニック)


ウラジオストクでFESCO幹部との会議(中央奥左が筆者)

ロシア鉄道フォーラムで富山県幹部と(左から2人目が筆者)

 パナソニックで約18年間海外にてグローバル・ロジスティクスを担当し、ドイツ駐在時代には欧州のユーロ導入に、また香港駐在時代には中国返還に遭遇して、歴史の節目に向けて、それぞれの地域の新しいロジスティック組織体制を方向付けた。その後、大阪港と神戸港の運用を統合する阪神国際港湾の設立に関わり、国の国際コンテナ戦略港湾政策を推進した。
 2018年春にABICから伏木富山港のポートセールス・アドバイザーの募集があり、これまでの経験を生かして貢献できると思い応募した。ABIC関西地区の活動会員の皆さんと交流があり、あらゆる分野の専門家である海外経験豊かな先輩会員諸氏にご指導をいただいた。
 担当する日本海港湾の一つである伏木富山港は、江戸時代には北前船の拠点港でもあり海運の長い歴史を誇る港である。北陸三県の中でも富山県は産業集積が進んでおり、かつ中国・アセアン地域への拠点進出が早くから進んでいる。また、ロシア極東地域にも近接しており、日本海港湾では唯一航路を持つウラジオストク港にはわずか1日の航海である。輸入は鉱産品や林産品、石炭、アルミ等原材料が多く、輸出は化学工業品、金属機械工業品、中古車等が中心である。
 伏木富山港の外航航路は韓国釜山港を経由するものが約50%を占め、約2,000万TEUの取り扱いコンテナを誇る東アジアのハブ港である釜山港との連携が不可欠である。また、ウラジオストク港を経由するシベリア・ランド・ブリッジは欧州までの輸送日数が約20日であり、EPAが締結された日本と欧州間の貿易の新しい輸送ルートとして定着に力を入れている。国交省においても日ロ経済協力案件の一つとして、利用拡大に向け積極的に取り組んでいる。国交省の出先機関である北陸地方整備局もこれからの日本海港湾の重要性を認識して、伏木富山港の港湾施設の拡充・整備に力を入れている。また、国の港湾政策に日本海港湾の活用を盛り込むべく情報共有を密にして連携している。
 富山県は立山連峰に代表される豊かな自然に恵まれ、勤勉で忍耐強く誠実な県民性が豊かな文化都市を築いている。所属する富山県商工労働部立地通商課はポートセールスのみならず、通商・企業誘致を担当しており、港湾施設整備を担当する土木部港湾課と連携して港勢発展に取り組んでいる。
 私の勤務は、早朝に大阪郊外の自宅から北陸本線「サンダーバード」に乗り、琵琶湖を横目に見ながら北陸トンネルを越えると新幹線の敦賀延伸工事が目に入るが、季節とともに趣を変える立山連峰を見ながら約4時間で職場に到着する。毎週2泊3日の勤務で、時には東京経由で帰阪して船会社訪問や企業本社訪問もできるので理想的である。
 県職員と連携し輸出入企業を訪問して、伏木富山港の課題を把握するとともに名古屋港等太平洋港湾に流出している富山県企業の貨物の伏木富山港利用を促進し、また、近隣内陸県企業の貨物を取り込むべく活動しているが、富山県や近隣県には、日本の製造業を支える基礎技術を持った中小企業が多いことに驚かされる。幸いにも前職の時代に築き上げた船会社幹部やフォワーダーとの人的ネットワークを生かして、新規航路の開設や新しい物流システムの構築を提言して、富山県企業の物流コスト合理化と貿易取引の円滑化に、民間の失敗を恐れないチャレンジ精神で取り組んでいる。
 環日本海諸国との経済交流が活発になり、日本海が「東アジアの地中海」となって、日本海側の中央に位置する伏木富山港が対岸諸国へのゲートウェイとして、東アジア地域の発展に寄与する日が訪れることを期待している。