活動会員のレポート

航空機産業分野の支援に従事して

  閑林 かんばやし 亨平 こうへい (元 トーメン)


「国際航空宇宙展2018東京」会場にて

海外事業統括部のメンバーと(前列左端が筆者)

 ABICからの案内を受けて、2016年8月に三菱商事の工作機械・産業機械の子会社である三菱商事テクノスにアドバイザーとして採用され、海外事業統括部に配属された。同社は三菱商事と三菱重工、三菱電機との合弁で始まり、両社の工作機械・産業機械の主に国内販売からスタートした機械系専門商社として、すでに45年以上の歴史を持つが、現在は三菱商事の単独子会社である。
 2年間インドやメキシコ、インドネシアをはじめとする海外事業の支援を手掛けた後、3年目からは産業機械事業部付となり、主に航空機産業関係の支援に従事している。元々同社は三菱重工の航空機部門を中心に航空機製造部門に強い関係を持ち、航空機製造独特の輸入機械の強みを生かしてきた。私は旧トーメン時代の経験を生かして、航空機産業すなわち航空機製造部門だけではなく、航空機を活用して事業展開を行う航空会社、特に整備事業への展開を中心に支援している。同社にとっても航空会社、整備事業との業務は未踏の分野でもあり、試行錯誤しながらすでに2年を経過している。
 具体的な業務としては各種展示会で知り合った特殊メーカーの代理店となり、それらを航空機メンテナンス企業に紹介している。最近はエアバスの躍進で欧州にこれら特別な技術を持った企業が成長しており、新しい発見が多い。エアバスを大きな頂としたいわゆるクラスターがEU全土に広がっている印象で、各県・地方ごとに急増してきた日本の航空機クラスターとスケールの違いはある。一方、スケールでいうと中国企業(というか資本)のビジネスに対する貪欲さはすさまじく、少し目立った技術を持つ欧州企業は即座に中国資本が買収する勢いで、これら中国勢との競争を実感している。昨年まで欧州企業と思ってきた企業が、気が付けば中国資本となっている場合がある。反対に欧州企業からはアジアのマーケットを見た場合、まず最大の関心は中国で、日本はその次となってしまった。人口・経済力で無理もないが、自ら新しいものを作り育てるよりもできたものを買収してしまうという中国企業の風土の違いに欧米・日本との差異を感じた。面白いのはインド企業で、「製造」という概念で見ると欧米・日本に明らかに後れを取っている感はあるが、何しろIoT系理科系人材のボリュームは大きく、一緒に事業を進めていくには日本と欧州にない強みを感じた。またこれから経済発展を目指す国としての活力はすさまじく、目を離せない存在となっている。
 今はフィンランドのメーカー(こちらも最近、中国ではないがベルギーが資本参加)とフランスのメーカーの代理店として、日本の航空機関連製造・整備関連大手企業に紹介を続けている。日本の三菱航空機の「スペースジェット(旧名:MRJ)」量産化が始まると、欧州のエアバスのような大きな傘となる企業群を育てることを目指すべきと念じながら、日々のやり取りに追われている。また最近のエアバス、ロールスロイスやGEの大手航空機関連メーカーは、製造一辺倒からその後のいわゆるアフタービジネスといわれる整備などの分野に積極的に進出しようとしており、三菱商事テクノスでの私の支援方向は間違ってはいないと確信している。
 今後もあと数年は同社のために活動したいと思っている。