活動会員のレポート

雪の冬をジッと耐え桜の春を待つ北陸の中小企業

  清水 しみず 克彦 かつひこ (元 ニチレイ)


ホーチミン商工会議所にて(右端が筆者)

英国市場FS調査支援(左から2人目が筆者)

 北陸の春は遅く、例年年明け後は雪も多く、毎朝新聞配達人の足跡を消す雪かきから始めるのが日課。ところが今年(2020年)は温暖化の影響か!?天候が一転、2月中旬まで記録される積雪もなく、県内のスキー場は閑古鳥、人工雪で集客を試みるもサッパリ、休業から今季の閉鎖を決定する所も出だし、中には廃業に追い込まれた所もある。
 私は冷力を基盤とする食品企業ニチレイに1978―2008年在籍、その間、同社の海外事業を主体に勤務、4回の海外駐在の機会を得て、最後の勤務地はブラジルのアマゾンとなった。帰国後、大学の先輩である小島孝夫氏(日本貿易会前理事、2019年退任)にABICを紹介された。「過去の貴殿の海外経験を、これからは国際社会貢献という形で社会に恩返ししては!」とのアドバイスをいただき、ニチレイ退社後の2016年2月にABICに入会した。
 現在、私は生まれ故郷の福井県で過ごしているが、2018年にABICに推薦され、中小企業基盤整備機構 北陸本部の国際化支援アドバイザーとして勤務している。自宅の福井から職場のある金沢まで、片道約2時間、途中停車20駅の普通列車での通勤である。都会の通勤とは違い、毎日多くの社会人、生徒さんたちと「おはよう」「お疲れさま」と言葉を交わす、地方ならではの楽しい通勤だ。途中駅には芦原温泉、加賀温泉、粟津温泉があり、途中下車することも可能である。
 中小機構は本部(東京)に加え、全国に9ヵ所の地域本部、9ヵ所の人材育成を目的とした中小企業大学校を設置し、全国358万の中小企業・小規模事業者の各種事業支援を展開している。北陸本部は富山県、石川県、福井県の中小企業を近距離で支援、また各県の他支援機関(県/商工会議所/商工会/中小企業団体中央会/金融機関/JETRO/JICA等々)と事業者の連携支援活動も展開している。この3県の事業者の国際化支援が私の担当である。①海外でのビジネスは関心あるけど、何から始めれば良いか分からない! ②あの国の最新事情や他の日本企業の展開現状を知りたい! ③自社の状況に合う海外事業計画を作りたい! ④人手不足なので外国人労働者採用方法を教えてほしい!等々、ご相談の内容はいろいろである。いわば「国際化のよろず相談」だ。北陸3県の中小企業の特徴は、「雪の冬をジッと耐え桜の春を待つ」という表現がピッタリで、何事にも「辛抱強く/粘り腰/伝統重視/品質一番」が事業理念の企業が多く、流行に振り回されない、流行を深追いしない姿勢といえる。この姿勢を海外の皆さまに理解・評価いただくのもわれわれ支援側の役目と捉えている。
 「事業にも人生にもリスクは付き物」が私の人生訓である。海外展開にも多くのリスクがあるが、それをいかに避けるか! 小さくするか!が事業成功の鍵ではないだろうか。2020年1月にフィリピン、英国に企業の現地市場FS調査支援で同行した。フィリピンでは火山噴火により飛行場、道路等のインフラが麻痺、英国では新型コロナウイルス感染による現場での緊急事態発生、共に予期せぬリスクだが、全日程を消化し支援先企業の目的を達成することができ、今後の海外事業展開に意欲を持って帰国いただけたことは本当によかったと思う。支援先企業に「目を向けること」「耳を傾けること」を支援の基本と捉え、「主人公は支援先企業」にて、これからも「伴走支援活動」を展開していく所存である。この支援姿勢はABIC、中小機構に共通する理念と、私は誇らしく思っている。
 会員各位の国際社会貢献に対するますますのご活躍を祈念申し上げます。