活動会員のレポート

外国籍中学生に対する高校受験支援

  藤原 ふじはら 和敏 かずとし (元 TOTO)


新宿区の支援者養成講座で体験談を披露

高校受験合格御礼のプレゼント

 2年前(2018年)の5月、ABICからの案内を受け、外国籍中学3年生の高校受験を支援することになった。対象者は新宿区に住むフィリピン籍の来日6年になる女子生徒で、数学・国語・理科の3教科の学習支援である。外国籍中学生とのコミュニケーションができるめったにない機会であり、面談後にさっそく支援活動に入った。
 受験までの期間が8ヵ月しかないので、基礎学力を身に付けるための学習支援というよりも、合格するための受験学習に的を絞り込んだ。幸い都立高校の試験問題は毎年同じ分野から基礎的な問題が出題されるので、絞り込みが容易であった。
 外国籍受験生にとり、最大の難関は教科ではなく、漢字の読解である。アルファベット26文字の英語圏から来た生徒にとって、ひらがな・カタカナ・漢字を織り交ぜた日本の試験問題は理解することがかなり苦しく、まずは試験問題が理解できるように頻出する言い回しの特訓から始めた。読解力が不足していても解ける分野を繰り返し学習し、長文の文章題は捨てる作戦を取った。
 受験校は偏差値から数校に絞られたが、学科の選択にかなりの迷いが見受けられた。両親はいずれも日本の教育制度に疎くて相談相手にならず、学校の先生は忙し過ぎて個々の生徒の相談にはなかなか時間を割けない。勢い学習支援者の出番となるが、アドバイスに当たって将来の夢を尋ねてみた。第1希望は日比の懸け橋としてフィリピン航空のアテンダント、第2希望は英語・タガログ語・日本語の3ヵ国語通訳を生かせる国際電話のオペレーターであった。中学3年生にして将来の希望職が描けていることに感心し、支援責任を強く感じた。
 学習面とは別途に経済的な負担も大きな課題と推測された。進学はおのずと都立高校に限定されたが、年額12万円の授業料の捻出にご両親は相当に悩まれたようである。生徒も家庭の経済事情はよく承知しており、受験料2,200円を振り込む際に郵便局の窓口で出したお金は千円札ではなく、貯金箱から取り出してきたと思われる10円玉と50円玉の山であった。親に経済的負担を掛けたくないとのけなげな一面を垣間見た時、合格必達を願わずにはいられなかった。
 過去問レベルよりも少し易しい問題を解かせ、褒めまくって自信を持たせたことが最大の特効薬であったと思われる。日を追って取り組み意欲が高まり、不断の努力と相乗して希望する高校への入学がかなった時は大安堵あんどした。彼女もよほどうれしかったと思われ、折り紙で星のペレットを作ってプレゼントしてくれた。フィリピン航空のアテンダントになりたいとの夢が正夢となり、その時には彼女がアテンダントとして搭乗した機内での再会を約束し、支援活動を終えた。
 「高校受験合格」の目標に向かい、一つ一つハードルを越えていく。その過程がはっきり見えるだけに受験支援は実に楽しい。そして合格のゴールのずっと先には夢の職が待っている。高校合格はその夢に近づく最初のステップであり、受験支援者はそのお手伝い役である。やりがいと達成感を体感できるこの支援活動を紹介していただいたABICや新宿区の関係の皆さまに厚く感謝申し上げる次第です。
 最後に、2020年の支援対象者はネパールから来た男子中学生であり、自動車整備士になる夢を持っている。その夢をかなえるお手伝い役になることを楽しみに、叱咤しった激励が続く今日この頃である。