活動会員のレポート

九州に知り合いおるねん?

   岩立 いわたて 弘充 ひろみつ (元 丸紅)


出張の際、修復中の熊本城をバックに

病院へリポートより久留米市内 後ろは耳納連山

 2019年4月より、縁あって、福岡県久留米市の病院(社会医療法人雪の聖母会、聖マリア病院)で外国人材開発の仕事に携わっている。聖マリア病院は、社会医療法人として「公共性の高い医療」を行うことで地域医療に貢献することを目指しており、「断らない救急」を合言葉にした筑後地域の拠点病院で、総病床数1,295、職員数約2,600人である。
 そもそも、この病院にお世話になるきっかけは、ABICでの公募のニュースを元上司が君に向いているのではと紹介してくれたことであった。長年商社に勤務してきたが、定年後は月並みなのかもしれないが、何か人の役に立つことをしたいと思っていたこともあり、応募してみることにした。ただし、勤務地が九州であることから、九州に知見のない自分は可能性が低いのではと思っていた。実際に書類選考の後の面接では、最初から、「九州に知り合いはいますか」と言う質問から始まったこともあり、九州の人優先なのかと開き直って、結構言いたいことを言った記憶がある。幸い、先進国ばかりでなく、発展途上国での駐在経験が評価されたようで、採用が決まったが、日本では東京本社勤務以外したことがなかったこともあり、かなり緊張しながらの九州赴任であった。
 勤務して1年半になるわけだが、病院という職場であること、また、九州の久留米という場所柄でいろいろ戸惑ったことがあった。病院については、テレビでいろいろな病院をめぐるドラマが報じられているので、自分なりに勝手にイメージしていたことがあったわけであるが、本当にそうなのだと思ったり、そうでもないなと思ったり、(もちろん、立場上、ここで紹介するわけにはいかないが)いずれにせよ命を預かる仕事であるから、「やってみなはれ」というわけには行かず、かなり慎重に行動することがベースにあるような気がしている。
 2020年に入って、新型コロナウイルス感染症が拡大して、専門病棟での患者の受け入れが始まって、かなり緊張感が増した。それまでは病院が職場なら、病気の際は気軽に受診できて便利だ、くらいの安易な気持ちでいたが、自分が病院にコロナを持ちこむわけにはいかないという、精神的なプレッシャーは相当であった。ちなみに今でも、マスクや手指消毒はもちろん、毎朝の体温測定は続けており、一刻も早く研究が進み、コロナ=普通の風邪といえるようになってほしいものである。
 自分の仕事は外国人材の受け入れで、理事長直轄の人材開発チームの責任者として、病院のための海外からの外国人材(インターン生、介護や給食の技能実習生、特定技能介護等)の受け入れ窓口業務、優良な技能実習監理団体の選定、優れた外国人材の発掘のための、海外(主に東南アジア)の大学等の教育機関との提携、情報交換等の仕事を行っている。
 ところで、日本政府は19年春から、従来の高度人材と技能実習生に加えて、特定技能という新たなカテゴリーを加えて、人材不足に対応すべく動いていたわけであるが、特定技能制度がうまく軌道に乗る前にコロナにより、外国との往来が大幅に制限されたため、難しい局面にある。コロナ禍で多くの技能実習生が職を失って(正確には実習先を失って)おり、一方では、アルバイトで学資を稼ぐことを前提とした留学生が、学業を続けられないといった問題も発生している。外国人材の受け入れは、少子高齢化社会の日本にとって、避けて通れない問題であり、仕事を始めてみて、大変奥の深い、一筋縄ではいかないことだと実感する毎日であるが、外国人材が将来、日本で働いた日々を振り返って日本に来て良かったと思えるような受け入れを行いたいと思っている。