活動会員のレポート

東京国際交流館「日本語広場」 対面およびオンライン授業

中川 なかがわ 昌昭 まさあき (元 さくら銀行)


日本語広場授業風景

 欧州・アジアと約四半世紀にわたる海外駐在を終えて、3年前に本帰国、日本で生活するということが非常に新鮮で、リハビリと称して旅行・美術館巡り等新しい生活を1 年近く楽しんでいた。しかし長いリハビリに、海外での貴重な経験を生かさないのはもったいないとの周りからの意見もあり、私の経験を生かした社会貢献をと考え始めた頃にABICの活動を知り、活動会員として登録した。
 登録後すぐに日本語教師養成講座の募集があり、当時は外国人の増加に伴う日本語教師の拡充が議論されていた時期で、何らかの貢献ができればと考え受講した。週1回の授業では、同期の皆の秀逸なトークがさく裂、毎回の授業がとても楽しくて、半年間があっという間に過ぎ、2019年3月に日本語教師養成講座を修了した。
 そして翌4月、東京国際交流館の「日本語広場」で日本語初級クラスを担当するという機会をいただいた。東京国際交流館は、外国人学生・日本人学生・国内外の研究者が集い語らう「国際研究交流大学村」の一拠点で、さまざまな国際交流事業が実施されている。そして「日本語広場」は、交流館に居住する外国人留学生やその家族が日本語を学習しながら交流を深める場であり、ABICが東京国際交流館からの委託を受けて運営している。
 日本語教師養成講座で模擬授業の経験は積んではいたが、実際の授業を担当するのは初めてであったので、授業内容については充分な時間をかけ事前準備を行う必要があった。ただ「日本語広場」には、いつでも誰でも自由に参加できるという大きな特徴があり、特定の教科書を使用して、体系的に積み重ね方式で授業を進めるということができない。従って実際の授業では、受講者のレベルが事前に想定していたレベルと相違していることがあり、予定していた準備内容ではレベル的に不適合となり、急きょ授業内容を変更するという事態も発生した。こうした事態が発生すると、一瞬どうしようかなと思ってしまうが、海外駐在中は、日本人会会長等さまざまな立場で臨機応変の対応を行ってきており、こうした場面でも臨機応変を楽しみながら授業を進めてきた。
 2020年に入るとコロナ感染が広がり、3月2日からは全国の学校が休校、これに伴い「日本語広場」も休講となった。こうした状況下、4月終わりごろ経験豊富な講師よりオンライン授業の提案があり、留学生支援グループのコーディネーターの方々のサポートをいただきながら準備を進め、5月11日からオンライン授業がスタートした。6月22日に対面授業が再開されたが、密を回避するため一つの部屋での受講者の人数が制限されたことから、オンライン授業は継続して実施されることとなった。
 「日本語広場」の受講者に接していると、例えば理解力が平均よりかなり高い、ノートの取り方が本当にうまい等々、地頭力の高さを感じさせる人が非常に多い。従って対面およびオンライン授業に関わりなく、レベルは少し高めに設定し、笑顔を忘れず皆で楽しみながら、日本文化も含めた理解を深めていけるような授業を心掛けている。
 オンライン授業の開始というのは、「日本語広場」にとって画期的な出来事で、「日本語広場」における日本語教育・国際交流の取り組みが、将来的に日本および世界の各地に発信できるという可能性を秘めている。「日本語広場」の今後のさらなる飛躍が楽しみである。