活動会員のレポート

在日外国人子弟の進学問題について
―教育現場からのアドバイス―

 日本語学校講師  牧野 まきの あつし (元 愛知県立高等学校教諭)


講演の様子

 高校の英語教員を40年以上続ける傍ら、日本語教育に関心を持ち独学で資格を得て実習生や留学生の日本語指導も始めた。日本語指導歴は約10年になる。2017年ごろにABICに所属する大学時代の友人から誘われて会員に登録。
 今回(2022年1月22日)は私の経歴から愛知県豊田市に住む子弟を持つ在日外国人、主にブラジル人に向けて講演を依頼された。主催者である豊田市の意向も踏まえて、内容は進学することにより日本の社会に適応する意義とその現状、方法についての提言を行った。
 英語を教えていた関係で海外への派遣団に加わったり、AFSなどの留学生の世話をすることもあった。その際、日本語を少し教える場面もあり、系統立てて日本語を教える力が必要だと痛感し、日本語教育能力検定試験に挑んだ。合格はしたものの現場での経験がないことから自治体が後援する日本語指導教室のボランティアに参加し、少し自信がついたところで地元の企業や農業法人の実習生への指導を始め、日本語学校での講師も務めることとなった。
 コロナ禍直前の2019年末には、在留外国人が過去最多の290万人を超え、永住資格を持つ人は80万人以上になっていた。ちなみに在留外国人の中で外国人技能実習生が約40万人、留学生・語学留学生が約35万人であった。アニメや日本の伝統文化も理由に挙げられるが、習得が難しい日本語であるにもかかわらず、なぜ日本を目指すのか。その一つには、日本の企業の雇用形式があるとみられる。新卒一括形式が今でも多く、実力主義で資格・経験が必要とされる海外と比べると、在日の若者もゼロからスタートできるのは利点ではなかろうか。日本の採用システムも悪くなく、彼らにとっては魅力的なのだろう。
 だが、日本で夢を実現するためには、日本の高校・大学を卒業する方が有利である。在日ブラジル人社会を例にとると、ブラジル人学校もあるが、日本の習慣、マナー、人間関係の築き方を学ぶには日本の学校の方が適している。公立高校には外国人を対象にした入試形式もある。授業料免除の制度もあるし、経済的に余裕がない生徒には定時制、通信制も用意されている。目先の出費、収入にとらわれると生涯賃金では大きな差がつくのである。
 在日家庭では母語を大切にし、学校、社会では日本語をしっかり学んでほしい。母語、英語、日本語のトライリンガルは企業でも武器になるはずだ。避けたいのは両方とも中途半端になり帰属する文化を失うことだ。日本の文化も身に付け、ラテン系特有の明るい社交性も発揮できればまさに学校、地域、職場でも輝くことができるだろう。