活動会員のレポート

大切な居場所

  時岡 ときおか 深雪 みゆき (元 ザ・パック)


日本語広場での授業風景

 私は、兵庫国際交流会館(HIH)でのABIC日本語広場の初級クラスで日本語を教えている。
 今年(2022年)で7年目になる。初級クラスは、日本語を全く学んだことがないゼロ初級の学習者が多い。学習者は留学生や研究者、その家族、会社員などである。HIHに住んでいる学習者もいれば、会館外から通ってくる学習者もいる。
 初級学習者は「あいうえお」から始まり、初級の文法を積み上げながら勉強している。初めは自己紹介をするのもやっとだが、少しずつ会話ができるようになると、日本語でコミュニケーションが取れるようになり、初級が終わる頃になると日本語で冗談を言える学習者も出てくる。
 館内での共通語は英語だが、館外から通ってくる人たちに英語が通じるとは限らない。日本語で話ができるようになるとクラス全員の共通語は、日本語になる。ちょっと不思議で面白い。
 週3回熱心にクラスに参加し、自主学習をし、日本で就職をした学習者もいる。そんな学習者たちに日本語を教えることは、教えるだけでなく新たに気付かされることも多く、自身を再発見でき楽しい。
 ABICとの関わりは、日本語ボランティアの仲間から声を掛けられたことから始まった。子どもたちの手が離れ、社会に復帰する前にリハビリをしようと始めたのが日本語ボランティアである。どんなことをしようかと思案している時に知人から、日本語を教えるボランティアがあることを聞き、とても興味を持った。その知人の紹介で実用日本語教育推進協会(THANK’s)の日本語ボランティア養成講座を受講したのが、外国人に日本語を教えることの始まりだった。
 THANK’sは、日本語教育の裾野の拡大と質の向上を目的とし、日本語ボランティアの育成、オリジナルテキストの作成、外国人への日本語教室を行っている。2021年、これらの活動を認めていただき第45回井植文化賞国際交流部門を受賞した。
 THANK’sでは、一対一のレッスンが主体になっているので、学生とじっくり向き合い集中して勉強することができ、学習者も確実に成長している。そこで、複数集合型のABIC日本語広場受講者で、日本語をもっと勉強したい学習者は、THANK'sでも学習をしている。
 そんなTHANK'sの仲間がABIC日本語広場の講師をしていた。彼女が声を掛けてくれたので、私もABIC日本語広場で日本語を教えることになった。また、私がABIC日本語広場の講師をしているご縁で、THANK’sが開催している日本語ボランティア養成講座をHIHで開催することができた。
 ABIC日本語広場の初級には6人講師がいる。この中にはTHANK'sの仲間も数人いる。初級は、中・上級と違い学習内容を共有していくことが大切だ。各曜日での学習内容をLINEで共有し、お互い情報交換をしながらレッスンを進めている。レッスンの内容を共有することで、学習者が弱いところは担当曜日以外のレッスンでも復習をしながら進めることができる。
 また、情報共有をしているおかげで、コロナ禍で急に休むことがあっても休講することなくレッスンをすることができた。このようにお互い協力し合いながら、日本語を教えることができている。
 ABICの日本語講師になり、外国人へ日本語を教えることだけでなく、新しい仲間も得ることができた。私にとってABIC日本語広場は、信頼できる仲間と人としても進化できる大切な居場所である。もちろん学習者にとっても、大切は居場所になっているだろう。