活動会員のレポート

未来を担う会社に社会的意義を感じて
―株式会社帝国電機製作所社外取締役として―

  川島 かわしま 一郎 いちろう (元 伊藤忠商事)


取締役会の様子(右から3人目が筆者)

帝国電機全景

 6年前の夏のことだったか、ABIC関西デスクのコーディネーターから、社外取締役を探している会社を紹介され、自分には重すぎる職務と戸惑いながら訪問面談をしたが、お互い波長が合い5年にわたり社外取締役兼監査等委員を続けている。
 近年の社外取締役は過去と違い、まず独立役員であることが求められ、過去の親会社や取引先や銀行からの派遣や知人等の選任は株主から強い反対を受けて認められない。今勤務している株式会社帝国電機製作所(以下帝国電機)も取引先出身の社外取締役が株主から反対され、取引のない異業種からの人探しを始め、話がABICへ来たようだ。
 社外取締役の職務も大きく変化した。過去は月1-2回の取締役会に出席、多くはコンプライアンス順守中心に経営陣に助言していた。不祥事には社外役員は何をしていたと非難があるように、これは今も重要な役割である。
 しかし、失われた30年といわれる日本経済の停滞もあり、日本の企業を取り巻く経営環境はこの10年で「激変」した。欧米流の企業価値経営である。経営指標(ROAやEBITDAほか)の重視、資本政策による株価上昇指向と株主還元、時価総額中心の企業価値、M&Aの急増、物言う株主の台頭、ジェンダー等社会変革と働き方改革等々である。
 この環境変化に呼応して、2015年に政府や東証から出された上場企業向け企業統治指針や投資家向け指針で社外取締役の役割も企業価値向上に重要と見直され、2020年には社外取締役ガイドラインも経済産業省から出された。
 ガイドラインは、①リスクの管理 ②経営陣の執行の監視と監督 ③中長期的な持続的成長の経営戦略考察 ④投資家目線の助言 ⑤投資家との対話やIR等への関与等を要請している。社長選任や報酬決定に関与する指名委員会・報酬委員会の設置が求められ、メンバー過半は社外取締役である。取締役会の構成の3分の1以上が法規制だが、今や過半が社外役員である会社が多くなってきている。
 正直6年前に職務を受けた時にこれほど重職になるとは思わなかった。過去の経営や商売で得た勘や経験知などは大切にしつつも、本やネットで日々欧米流経営新知識を学んで重責に応えられる理解力・判断力を磨き、社内経営陣とメールをやりとりする毎日である。
 さて、激変した経営環境といえば、最近よく耳にする地球環境や社会環境を守るESGとかSDGsも、大きな社会的貢献と同時に企業価値の持続的向上を可能にする目標である。
 帝国電機はこの地球環境・社会環境を守る仕事の真っただ中にいる会社である。84年の社歴を持つが、1960年代に開発したキャンドモーターポンプ(canned-motor-pump以下CMP)の製造販売で国内の約70%、海外で約40%のシェアを持っている。
 ポンプは通常別々の「液体を吸い上げるポンプ部分」と「装置動力のモーター部分」がカップリングされて使用されており、隙間から液体が漏れる可能性を否定できない。CMPはCanned=缶詰の名の通りモーターをポンプの中に入れて一体化させており、完全無漏えい・外気無接触である。爆発性・引火性・毒性のある液体、高温の液体や化学薬品等を一切外に漏れさせず吸い上げ移送する。液体漏れの損失や危険がなく、公害や環境汚染の心配がない。
 用途例は、石油化学・石油精製・電力・半導体などのプラント工場や空調設備などだが、最近は「脱炭素」関連の設備への採用も急拡大している。化石燃料の代替エネルギーであるアンモニアやバイオマスの関連設備や洋上風力発電等に利用されている。クリーンな社会、地球環境や人に大きく貢献している。
 つまり帝国電機のポンプを必要とする地球規模の需要の拡大は、そのまま好ましい明日を約束するものと信じられる。今以上の良い製品とサービスが提供できる会社として成長が続くことに社会的意義を感じ、発展のお役に立てるようにこれからも研さんしていきたい。