田辺高校での講演
新庄中学校での講演
ABICより和歌山県立田辺高等学校および田辺市立新庄中学校で講演する機会を頂いた。テーマは、田辺高校では「世界平和に貢献する日本人」、新庄中学校では「大学で取り組んでいるSDGs」である。いずれも、私が神戸大学および摂南大学で研究と教育に携わっていた分野に関係するため、喜んでお引き受けした。
6月19日、田辺高校では、まず、世界平和に貢献した2人の日本人を紹介した。1人目は、欧州統合の理念を主張した青山栄次郎(別名リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー。ハインリヒ・クーデンホーフ=カレルギーと青山みつの次男)であり、彼の思想が第2次世界大戦後、欧州統合を通じて欧州の和解・平和をもたらしたことを説明した。2人目は、戦前の外交官・杉原千畝であり、第2次大戦中、ナチスによる迫害を受けつつあったユダヤ人に対し、幾多の困難を乗り越え日本通過ビザを発給し、6,000人近くの命を救ったことを説明した。
次に、欧州の平和実現を主たる目的の一つとするEUの高等教育政策を紹介した。その政策の延長線上で、私が総代表となり日欧大学コンソーシアム(神戸大学・大阪大学・九州大学など日本側4大学、ルーヴェン大学など欧州側6大学)を組成し、双方の留学生交流を実現したことなどを説明した。
翌日の6月20日、新庄中学校では、SDGsに関する大学の取り組みについて紹介した。まず、私が神戸大学の大学院で指導した卒業生を摂南大学に招聘して、SDGsの目標6(安全な水とトイレを世界中に)に関する講演会を開催し、その卒業生から国際協力機構(JICA)に勤務しアフリカで井戸を掘る事業に携わった経験を報告してもらったことを紹介した。彼がアフリカで住民に対し、清潔な水が健康にとり重要ということを幾度となく説明し、住民の協力により井戸を完成することができたこと、その結果、当該地域の幼児死亡率が激減する一方、水くみ・水の運搬から解放された子供たちが通学できるようになり、友達がたくさんできたことなどを説明した。
次に、SDGsの目標11(住み続けられるまちづくりを)に関連し、同県すさみ町における摂南大学生の提案について紹介した(すさみ町と摂南大学は包括連携協定を締結しており、毎年、多数の摂南大学生が同町を訪れ、町おこし活動に携わっている)。提案の内容とその背景は以下の通りである。同町では人口が減少しており、このままでは人口減→税収減→歳出カットが必要となり、その結果、ますます町の魅力が低下し、一層の人口減を招く可能性がある。このため、摂南大学生は町に対して次のような提案を行った。まず、町の予算でスマート・ウオッチを購入し、全住民に配布する。次に、住民はスマート・ウオッチで毎日の歩数を計測し、町に報告する。次に、町はこの歩数に応じて同町内のみで通用する地域通貨を発行し、住民はこの地域通貨を町内の商店で使用する。つまり、住民はより多く歩くことで健康を維持し、町は医療関連予算の削減が可能となり、町内の商店は売り上げを増やすことができる、という提案である。なお、摂南大学生はこの提案を2017年に通貨に関する学生のアイデアを競う日本銀行主催の「日銀グランプリ」で発表し、最優秀賞を受賞している。
最後に、摂南大学は、すさみ町を住み続けることができる町にするため、今後もさまざまな努力をしていくことも力説した次第である。