フランス三菱で昔の仕事仲間と
パリ Maison et Objet 展示会での高知県ブース
ベトナムでの訪問先にて(左端が筆者)
2016年6月末に三菱商事を定年退職後、5年間勤務していた私大の就活アドバイザー職を辞め、今後の就職先を検討していた。元々海外関係の仕事をしたかったところを、母の介護絡みで出張のない大学職員となったが、この5年の間に母が亡くなり、再度海外関係の仕事をしたいとの思いが強くなっていた。
ちょうどその頃、三菱商事の先輩の勧めもありABICに登録、数ヵ月後に高知県産業振興センターで海外支援コーディネーター職を公募しているとのメールをもらった。大学退職後最初のチャレンジとして軽い気持ちで応募してみようと思い立ち、1次の書類審査に通り、2021年11月に2次試験(面接)で初めて高知を訪問した。
調べたところ、偶然ながら、三菱商事の先輩が退職するのに伴う後任の公募であることが後で分かったが、初チャレンジで受かる保証もないので、先輩には迷惑にならぬよう挑戦することだけを伝え、合格が確実になるまでコンタクトを避けた。2次試験に通り、高知に単身赴任することになり、海外転勤経験は数回あるものの、東京生まれ東京育ちの自分が国内他県で単身赴任生活を送ることに当初不安があったが、先輩の手厚いアドバイスもあり、腹を決め、2022年1月11日より勤務を開始し、現在3年目となる。
仕事内容は県内ものづくり企業の海外進出に対する支援が主で、相談のあった企業を個別に訪問しながら、各企業の強み・弱みを深く理解し、海外進出の段階に応じた具体的なアドバイスを行うことに加え、海外展示会(ベトナム、タイ、フランス等)に県内企業を伴って出展し、ビジネスの種をまいて企業マッチングの機会を追求する等のお手伝いを行っている。
高知県内の中小企業には、土佐和紙、土佐打ち刃物のように伝統を継承しながらも市場に適合して製品・技術を磨いた企業が比較的多くあり、進出希望国の市場にはまれば商談が進展するケースも多い。一例として、2度のパリでのMaison et Objet出展を契機に、フランスの高級ブランド系ホテルから受注したケースもある。高知に来て、仕事でフランスとの関係ができて、三菱商事時代のフランス留学や駐在員時代の北アフリカやフランス等々でのビジネス経験で培ったノウハウが活用できるケースに恵まれることになるとは、当初は全く予想していなかった。
仕事の話ばかりになったが、高知は気候が温暖で、最近は台風が通過するケースもめっきり減り、また、食材面ではカツオを中心とした魚介類、土佐の赤牛、地元の新鮮な野菜、果物などに恵まれているのに加え、土佐酒も18の酒蔵が県内に点在しており、飲食の楽しみも格別である。高知市内にはひろめ市場という酒飲みには有名なスポットもある。
元々、お遍路さんを受け入れて、おもてなしをする「お客文化」が県内に根付いており、着任当初 「高知との関わりはあるのか?」「酒は飲めるか?」の2点を頻繁に質問されたのは、このお客文化が背景にあるとしばらくして合点がいった。事務所内は当然ながら、どこに行っても皆さんが土佐弁で話すのには当初かなり戸惑い、聞き取れるものの意味が分からないケースもあったが、今ではよほどの例外を除いてコミュニケーションの問題はなく、酒席等を通じて温かく迎えていただけたおかげで、東京出身の私でもすぐに環境に溶け込めた。