活動会員のレポート

JETROハンズオン支援に参画して

鮎川 あゆかわ 泰之 やすゆき (元 artience)


企業訪問(左が筆者)

 2023年度、2024年度と、ABICを通じ、JETRO(日本貿易振興機構)の「新輸出大国コンソーシアム」ハンズオン支援のパートナーを務めている。これは、全国から採択された1,000社余りの中小企業が推進する海外進出プロジェクトで成果を出していただくため、海外ビジネスの専門家といわれるパートナーが一人一人、それぞれの強みのある地域、業種に応じて1年間伴走支援するというものである。私は長年の化学メーカー勤務のほとんどで海外事業に携わっており、ベルギーとフランスに、それぞれ営業、経営という立場で、延べ10年半にわたり駐在した。その後60歳を期に退職し行政書士として独立、その際、自らの海外ビジネスの経験もお役に立てたらと、ABICの会員に登録した。折よくすぐに当ハンズオン支援のパートナー募集の話があり、応募した結果、このような形で務めることとなった。
 私は現在、山梨、滋賀、鳥取、島根、愛媛の各県の地場食品業界の企業の輸出プロジェクトを支援している。人脈や情報を提供し、海外進出に対するアドバイスをしながら、月一度のオンラインミーティングで進捗しんちょくを管理して、各企業が計画に掲げる成果の達成を図るものであり、一年に一度は各企業を訪問し、事業の現場を確認させていただいている。企業の皆さまはご自身の事業・商品・地域に対する思いがあり、それらをもって欧州やアジア市場へ参入し、事業の発展につなげようと情熱を傾けられている。しかし、海外事業の経験もさることながら、食のような消費財ビジネスでは認知・ブランドという部分も不可欠であり、各市場において一から構築しなければならない。そのような中で、各国での販路開拓、そして商談、実績化、さらに時には現地バイヤーとパートナーシップを組み、認知度向上を進めていく、ということになる。例えば、まず突破すべき販路開拓ですら、JETROの情報網、さらに私自身の人脈も駆使し、企業のイベントに積極的に参加するなどして、やっと2-3件が成立するといった具合であり、わずかな進捗のためにも非常にやることが多く、成果達成まで時間を要する。企業も私も毎年度末までというタームを非常に短く感じている。
 今の日本では、優れた品質、伝統的な産業のレベルの高さは依然世界屈指のものであるが、多くの産業、特に第2次産業のようなリアルな産業の市場は残念ながら縮小傾向にある。一方、特に食などの市民消費生活関連については、日本の産品は海外各市場で大変ポピュラーなものとなり、その需要もブームといえるほどに拡大を続けている。このような中で中小企業の皆さまが海外各市場に進出されることは必然のことといえる。中小企業の海外進出については、その知名度・認知度が決して高くない点、人的資本や投下し得る資本も限られている点など、課題が多いことも事実であるが、それだけに商談が進み、実績化ともなれば企業にとって得ることも多く、その喜びも格別なものと考える。JETROのハンズオン支援プロジェクトのパートナーの職を通じて、こうした支援する中小企業各社に成果を上げていただきながら、業績向上・グローバル化といった部分で貢献し、その積み重ねによりわが国の経済の活性化を中小企業の現場から実現することができれば、と思う。


日本屈指の清流、島根県高津川
この源流をテーマにした日本酒の欧州への輸出を計画している企業も支援