
セミナーの様子
2025年1月29日、大妻中野高等学校にて、第1回ABICグローバル・キャリア・セミナーを担当した。同校は文部科学省のWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業におけるグローバル人材育成強化拠点校として選ばれている。WWLは、「高等学校にて、将来イノベーティブなグローバル人材を育成する」ための事業であり、今回、ABICと連携した当セミナーが実施された。
私は、商社での勤務経験はないが、2017年ごろに、当時、大学講座コーディネーターをされていた猪狩眞弓さんからABICをご紹介いただいた。日系大手電機メーカーや外資系人事コンサルティング会社での勤務、高校・大学・大学院と3回の米国・英国留学、起業などの経験を生かし、現在、ABICから紹介された大学で非常勤講師を務めている。専門分野は、労働市場におけるジェンダー平等、女性のキャリア形成、ダイバーシティマネジメント、グローバル人材教育である。
今回の大妻中野高等学校のセミナーは、「グローバル時代を生き抜く女性のキャリア形成〜VUCA時代に自分の道を自分で切り開く力〜」をテーマに、進学先が決定している3年生の女子生徒を対象に実施された。参加者は87人であった。学校からの依頼内容は、私自身の経験を基に、グローバルな環境でキャリア形成を目指す女性の生き方について生徒に考える機会を提供してほしいということだった。具体的には、卒業までの時間の使い方、大学での学び、社会に出てからのキャリアについて考えてもらうことが目的であった。
セミナー当日は、冒頭でテーマの重要性を次のように説明した。現代のグローバル社会は複雑性が増し、不確実性が高まるVUCA時代である。日本においては、女性が社会で直面する「壁」や「困難」が依然として多く、例えば、管理職の部長職に占める女性の割合はわずか8.3%(※)である。女性のみならず、男性を含めた組織や社会全体での取り組みが必要だが、女性自身が主体的にキャリアを築く力、多様性を受容する力も不可欠である。大学では、専門知識の習得だけでなく、論理的思考力や多様性の受容力を育むことが重要であり、課外活動や留学などを通じて多様な人と関わり、視野を広げることも重要であるという話をした。また、社会に出た後は「就社」ではなく、自分のキャリアを主体的に築く意識を持つことが重要であり、終身雇用に依存せず、スキルを磨き続けキャリアを継続して、変化に適応する力を持つことで、どのような環境でも活躍できる人材になれると強調した。
セミナー後、参加した生徒から多くの感想が寄せられた。学んだことを振り返り、「行動に移そう」「頑張ろう」と決意する生徒が多かった。また、日本における女性のキャリア形成の課題、VUCA時代に求められるスキル、キャリア継続の重要性について学ぶことができ、挑戦し続ける意識が高まったという意見も多数あった。多くの生徒が自分自身の目標を具体的に考え、どのような行動をとるべきか明確にする機会となったのではと思う。セミナーで説明した現実社会における女性のキャリア形成における課題を真剣に受け止め、自身の未来を考える生徒が多く、有意義なセミナーとなったと感じている。日本社会は確実に女性の活躍の場が広がっており、生徒たちが主体的にキャリアを築けば道は開けると信じている。女性が自身のキャリアを主体的に形成し、より多くのリーダーシップの機会を得ることが、日本社会全体の発展にもつながる。セミナーがきっかけとなり、彼女たちが将来のキャリアについて考え、自信を持って夢に向かって挑戦することを願っている。
(※)出典:内閣府 男女共同参画局「令和6年度版 男女共同参画白書」 p.122