活動会員のレポート

粟津中学校にて生涯初めて教壇に立つ

橋本 はしもと 雅至 まさし (元 丸紅)


授業の様子

校長室にて先生方およびABIC講師陣・コーディネーターと
(左から3人目が筆者)

 2024年10月に丸紅の先輩OB諸氏の勧めもあり、ABICの会員となった。関西で中国関係に詳しい人材を探しているということだった。私自身は2020年6月に丸紅を退職して以降中国との関わりは全くなく(一方中国の変化は非常に早く)、とても中国関係に詳しい人材とはいえないため入会を躊躇ちゅうちょしたが、入社後40年ほど中国と関わり、中国の「改革・開放路線」の最中から中国が「世界の工場」と呼ばれGDP世界第2位の大国と化した時期まで18年ほど上海・香港に駐在した経験が社会に役立つのであればという思いで入会を決意した。
 今回、大津市立粟津中学校での中国に関する国際理解教育の講師の依頼を受けた。資料を準備するに当たっては、下記のような内容をできる限り分かりやすく、コンパクトにまとめてみた。


①紀元前から関わりのある中国と日本の一衣帯水の関係

②中国が抱えている国内外の問題(国境、少数民族、人口減少など)

③清朝末期から中華人民共和国建国に至るまでの欧州列強および日本による侵略の歴史(特に中国人は日本軍が行った蛮行を日本では正確に教えていないという不満を持っており、今回、日本の教科書には載っていない内容も含め説明した)

④中華人民共和国建国後の大躍進政策の失敗、文化大革命による苦難から米国・日本との国交正常化に至る過程

⑤「共産党一党独裁」とはどういうことか

⑥鄧小平氏が最高指導者になって以降の「改革・開放路線」から「世界の工場」となりGDP世界第2位の大国に至るまでの流れ

⑦「社会主義」「資本主義」の定義と双方の利点・欠点、鄧小平氏の社会主義的市場主義という政策がいかに時代に即していたのか

⑧中国駐在時代に経験した日本人と中国人の思考・習慣の違い、日本の常識は決して世界の常識ではなく、いかに柔軟に異文化に対応するのが大切なことか


 特に19世紀半ばのアヘン戦争から現在に至るまでの経緯については、一つ一つの事柄を説明するのでなく、「なぜそのようになったのか」という大きな流れに注意して資料を準備し、説明した。
 生徒たちの中国に対する理解度なども不明なことから一方的な講義となったが、本来は生徒たちにも意見を交換しながらいろいろ考えてもらう双方向の講義ができれば理想的であったと思う。今回の講義で生徒たちの中国に対する理解が深まり少しでも興味を持ってもらえたらうれしい。