
放課後の日本語指導の様子
私は在職中、先輩OBよりABICの存在および活動目的を紹介され、退職後の2019年に入会した。その後2021年にABICの日本語教師養成講座を受講し、修了後は東京国際交流館での日本語広場にて初級クラス(ゼロ日本語学習者向け)を担当している。さらには、都立A高等学校にて外国籍生徒への日本語指導支援、そして都立B高等学校にて教務担当者と外国籍生徒の保護者(中国人)との面談における通訳支援を行っている。以下に都立A、B両校での活動状況につき紹介させていただく。
A高等学校では、1年生の外国籍生徒約70人(ネパール人、中国人、タイ人、フィリピン人、ウクライナ人など)を対象に、日本語の学習レベル別にクラス分けして、放課後、ABICのコーディネーターを含む5人の活動会員が日本語指導を行っている。
ABICのコーディネーターと学校側が策定した指導目標に沿い、使用する教材の選定、シラバス作成に始まり、文章読解や漢字・語彙・文法の講義、練習問題の作成・採点や解説など、生徒の学校授業につなげる日本語学習支援が主な活動だ。同一クラスでも漢字の読み書きが困難な生徒もいるため、生徒たちの興味を引くような講義が求められるが、楽しさの中にちょっぴり厳しい対応も必要となり、そこがわれわれ講師の腕の見せ所ということになる。
卒業後は弁護士や母国での日本語教師、ネイリスト、看護師になりたい、あるいは起業して成功したいといった明確な目標を既に掲げている生徒もいて、頼もしく感じつつも、卒業後の日本での進路で必要になる正確な日本語の重要性や自身の体験談を講義に加え、日本語学習のモチベーションを維持してもらうことを心掛けている。
B高等学校の保護者面談では、日本で生まれ育ったため中国語が全くできない生徒と、保護者(中国語のみ可、日本語が困難)との間の意思疎通に壁があり、中国語の通訳として学校・保護者・生徒の間のコミュニケーションを支援する役割を担っている。生徒の生活上のトラブル、友達関係、アルバイト、食生活、家族生活など親御さんが心配する問題についても、専門カウンセラーとの間の通訳を担っている。私は在職中、北京での業務研修(OJT)から始まり、通算6回、合計26年余りを中国各地に駐在し事業運営を担う機会を得て、地区・地域により異なる方言や言葉使い(語彙)、習慣(風習)への理解を積むことができたが、保護者が日本の文化や習慣に慣れることは年齢的になかなか難しいと思う。日本しか知らないわが子と考え方やさまざまな事情が違う中で、通訳として双方の理解を促す支援は非常に難しいものの、自身の新たな学びの機会となり、スキルアップにつながる非常にやりがいのある活動となっている。なによりも、日本で生活する外国人の日常の課題克服の一助となれれば幸いと感じており、ABICのコーディネーターからアドバイスをもらいながら「元気に明るく楽しく、そして真剣に」をモットーに活動することができている。
日本人学生や社会人の外国離れが進んでいるといわれるが、外国籍の生徒や学生との交流を通じた相互理解の機会は貴重であり、これからの日本に不可欠であると感じている。
この貴重な機会を与えてくれたABICのコーディネーターおよび関係者にこの場をお借りし感謝申し上げる。