活動会員のレポート

埼玉県中小企業の海外展開に挑む
統括コーディネーターとしての第一歩

香西 こうさい はじめ (元 住友商事)


コンソーシアム企業間におけるキックオフイベントの様子
輸出を行うメリットに関する講演

ホーチミンにおけるテストマーケティングの様子

 私はもともと総合商社に勤務し、その後は外資企業やスタートアップを経て、多様な業務に携わってきた。2024年春、公益財団法人埼玉県産業振興公社が募集する「海外展開支援事業統括コーディネーター」の職にABICを通じて出会い、同年6月より業務を開始した。自身の知見を地域経済に還元したいという思いからのチャレンジである。
 現在は、埼玉県内の中小企業を対象に、輸出を軸とした海外展開の支援を行っている。主な支援業務は、県の支援メニューに基づくマーケティングセミナーや啓発イベントの企画・運営、展示会・商談会への出展支援、バイヤーとの商談調整、翻訳支援、物流課題への対応、価格戦略の助言など多岐にわたる。
 対象となる企業は、輸出未経験の事業者から、すでに一定の実績を持つ事業者まで幅広い。いずれも共通しているのは、「海外市場に挑戦したい」という熱意である。私はその熱意を具体的な成果に結びつける役割を担っている。
 これまでに、公社が輸出志向のある県内企業に声をかけて組成した「海外展開支援コンソーシアム」において、ネットワーク形成と実践支援の第一歩としてイベントを複数回開催した。イベントでは、外部講師による「輸出を通じて企業の事業力そのものを高める」という視点を伝える、示唆に富んだキーノートスピーチに加え、埼玉県内企業による成功事例の共有、さらに会員同士によるグループディスカッションを実施。参加企業にとっては、新たな発想や自社の可能性に気付くきっかけとなり、ネットワーク形成と実践支援への第一歩となった。
 その中で印象的だったのは、もともとBtoCビジネスを主軸としていた企業が、BtoB領域への事業展開を模索する中で、アジア圏に販路を持つ卸売企業(同じコンソーシアム内の協力事業者)とのマッチングが生まれ、現在複数の商談につながっているケースである。また、参加企業のニーズを踏まえ、JETROのプログラムなど外部支援制度への橋渡しも行っており、段階的な輸出体制の整備に向けた動きが少しずつ具体化してきている。
 この活動を通じて、地域社会に役立つというやりがいを強く実感している。日々の支援が企業の成長につながる喜びは、民間企業勤務時代とは異なる充実感をもたらしてくれている。また、自らが旗振り役となって新しい挑戦を仕掛ける機会も多く、刺激に満ちた日々である。
 今後は、小さな成功事例を積み重ねながら、それをより多くの事業者に波及させていきたい。現在の重点分野である食品および雑貨類に加え、他分野の展開も視野に入れ、埼玉から世界への挑戦をさらに加速させるつもりである。
 ABICからいただいたこの貴重な機会に深く感謝し、今後も地域企業の成長と発展に全力で貢献していく所存である。