
講義の様子

グループワークでの外国人留学生の意見や感想
2022年10月にABICから紹介を受けたのを契機に、これまで幾つかの大学で講義を担当してきた。オムニバス講座や外国人留学生向け英語講義など、登壇の機会をいただけることは、実務で得た経験を社会へ還元する貴重な場となっている。
私は2016年に上場会社の常勤監査役に就任し、8年間にわたり企業経営全般に携わった。また2017年に中小企業診断士資格を取得し、副業として中小企業の経営相談・伴走支援を行ってきた。監査役として培った視点を生かし、経営者の声に耳を傾け、立場に寄り添った助言を心掛けている。
定年退職後は大学教員(非常勤)を目指し、2020年に社会構想大学院大学の実務家教員養成課程(第6期)を修了した。本課程では、実務経験を「何を」「どのように」伝えるかを問い直し、暗黙知を普遍化し言語化して90分授業へ再構成するプロセスを学んだ。
講義テーマは「異文化理解」「日本経済(失われた30年)」「コーポレートガバナンス」「中小企業論」「脱炭素経営」「決算書の見方」などである。留学生も受講するため、日本社会・経済への関心に応える題材を選び、毎年最新情報を採り入れて更新している。ABICの紹介により、東洋英和女学院大学大学院(2023年)、創価大学(2024年以降)で登壇してきた。今後は法政大学(2026年5月)、埼玉県産業振興公社「グローバルビジネス人材育成講座」(2027年1月)でも登壇する予定である。
私が最も重視するのは双方向性である。付箋紙で気付きや意見を書いてもらい、グループ討議と全体共有で相互学習を促す。受講生からは “I especially enjoyed the interactive and practical approach …” “I liked how we addressed and discussed real problems in Japan like low wage, inflation …” といった声も寄せられ、実務家ならではの現場感が学びを深めることを実感している。
一方で “Perhaps the pace …” “include a short numerical example …” という改善提案もあり、授業のペース配分、要点の整理、数値例や事例の工夫へ反映している。受講生の反応とフィードバックにより授業は磨かれ、私自身も経験を再解釈し直すことができる。
とりわけ留学生向け講義では、日本の企業文化やガバナンス改革を、各国の制度や価値観との違いとして捉え直し、対話を通じて理解を深めることを意識している。受講生が「自国ではどうか」と語り始めた瞬間、教室は学びの共同体へと変わる。その場で生まれる問いと気付きこそ、私にとって最大の収穫である。
今後は、授業で得られたフィードバックを教材へ反映し、ABICの派遣講座で培った知見を他大学にも展開しながら、実務家教員としての知的資産を継続的に蓄積していく。
梅棹忠夫『知的生産の技術』(1969年)が説くように、経験を整理し共有することは知的資産の創造・蓄積である。ABICが講師を派遣している講座は社会貢献の場であると同時に、学びの循環を生み出す場でもある。今後も受講生との対話を大切にし、実務の知見を次世代へ橋渡ししていきたいと考えている。