

授業の様子
2024年1月に、伊藤忠商事株式会社の先輩の勧めもあってABICの会員となった。計17年の海外駐在経験などを生かした社会貢献活動ができればという思いだったが、2025年11月の甲南大学でのパネルディスカッションに続いて、今回は和歌山大学附属中学校での出前授業というお話をいただき、喜んでお引き受けすることとなった。
先方からの要望は、中学1年生全員向けのキャリア教育の一環として、生徒たちにより広い視野を持たせるため、自身の経歴に沿った進路決定の判断、商社の仕事、自身の海外経験などを紹介してほしいということであった。
私自身も香川大学教育学部附属高松中学校出身ということもあり、生徒たちが自身の経歴に共感を持つ部分も多いと想像し、なぜ、地元さぬき市の公立小学校から附属中学校に進学したのかからはじめ、高校、大学を卒業するまでの進路の考え方について、その変遷を紹介した。
伊藤忠商事に入社した経緯を説明する際には、商社とはどういう会社か、中学1年生にも分かるように説明するのは難しいとは思ったが、意外なほど反応は良かったように思う。総合商社の歴史は17世紀の英国・オランダによる東インド会社にまでさかのぼり、さらにドイツや米国でも総合商社的な会社は生まれたが、欧米企業は合理的な考え方からどうしても採算の悪い分野から撤退し、事業性の高い分野に特化していきがちであったため、総合商社としての形が残らなかった。一方、日本の総合商社は既に150年以上の歴史を持つ会社が多く、これは創業200年以上の会社が世界の半数以上日本にあることでも明らかだが、日本企業は環境の変化に順応する力と環境悪化に耐える力があるからだと思う、という説明をしてみた。
また、総合商社の機能については、繊維分野を例に挙げ、原料から製品まであらゆる分野の国内取引のみならず1980年代の半ばまで繊維品の輸出大国でもあったが、これらの取引の仲介を担っていたのが商社であること、1985年以降の急激な円高により日本の輸出競争力が低下すると生産拠点を中国などに移転し、中国で生産したものを輸入もしくは欧米に輸出するようになったが、これらも商社によるアレンジが中心だったこと、2000年以降、中国の発展により中国での生産コストが高くなると、ベトナムなどに生産を移転するだけでなく、中国国内での取引も仲介するようになったが、こういった環境変化に機敏に対応することが商社の大きな機能の一つであり、また、日本人の購買力向上を狙って欧米のブランドを大々的に導入する道筋をつくったのも商社であることを説明した。もう一つの機能は事業投資であり、企業に投資をしてその企業の価値を上げ、あるいはその企業の販売・購買活動に関与してメリットを享受する、もしくは新たに企業を立ち上げ自ら経営することもあると説明した。
私自身の会社生活を振り返り、特にイタリア、中国での生活やビジネスについて紹介しながら、生徒たちの海外志向を高められればと思い、面白おかしいエピソードをいくつか紹介した。
最後に、海外駐在を通して思うこととして、以下を挙げた。
①外国人も私たちと同じ人間。
②ただ、国や地域によって文化や習慣は違う。
③この違いを楽しむこと。
④外国語の習得はお得。(例え翻訳機が発達しても)
⑤日本人は世界中で尊敬され、もしくは好かれている。これは諸先輩のおかげ。
1時間の授業のあと、質疑応答では的を射た質問が矢継ぎ早に出てきて、充実感のある出前授業だった。