
私がお台場にある東京国際交流館(TIEC)で書道講師として活動を開始したのは、2021年以降のコロナ禍を契機とする。ABICのコーディネーターより講師として推薦された。ABICとは2013年ごろから関わりがあり、通訳ボランティアとして、留学生家族の入園、入学、健診サポートに携わってきた経緯がある。私自身、米国、南アフリカでの滞在とフランスでの出産を経験している。この経験は、留学生家族への共感の土台となっている。
TIECでの書道講師の時間は、私にとっても大きな喜びである。書道を通して、日本らしさや日常の中で書が登場する場面を伝え、それに誠実に向き合い、強い関心をもって楽しむ受講生と出会えるからである。受講生の出身国・地域は、チェコ、フィリピン、ウガンダ、パキスタン、ベトナム、インド、中国、台湾など多岐にわたる。歴史も文化も言語も異なる人々が、「書道」という共通点のもとに一堂に会する機会は、極めて貴重である。
教室では、小学校で使用する書道セットを用い、古新聞で練習を行う。最初は書き順のみを伝え、自力で書いてもらい、その後、手を添えて筆の運びを体感してもらうと、多くの受講生が驚きと感動の声を上げる。近年は「一期一会」「感謝」「幸福」など文化的な言葉や、干支、大学名を書く人も増えた。最後に清書し、自身の国名と名前を添える。書道教室の良さは、何よりも楽しむことにある。集中して書くことで頭がすっきりするという声も多く、研究に忙しい留学生にとって、書道は瞑想に近い効果をもたらしているように感じている。