マンスリー・レポート No.21 (2002年7・8月)
活動会員のレポート
  2002年FIFAワールドカップ・サッカー・ボランティア奮闘記
    赤田 堅(元 丸紅)
●日本各地で開催された2002年FIFAワールドカップ・サッカーにボランティアとしてABIC活動会員57名が活躍しました。
 ワールドカップ日本組織委員会(JAWOC)経由で登録、各種研修を受け、各会場等で活躍しました。
 その中の一人で、神戸会場で活動した赤田堅さんのレポートを紹介します。赤田さんは、高校および会社のサッカー部で選手としてプレー。ペルー、アルゼンチン、ベネズエラに通算18年駐在、中・長期出張を入れるとスペイン語国滞在20年以上。アルゼンチンでのワールドカップ(1978年)は開会から決勝戦まで首都での全試合観戦し、また、同国のサッカークラブ「リーベル・プレート」の会員で毎週試合を観戦、NHKが取材にきた時も解説・通訳を務めた、という経歴をお持ちです。

 ワールドカップ・サッカーは神戸では3試合が行われ、私はボランティアとして下記の3部門に参加いたしました。

6月7日スウェーデン×ナイジェリア戦
試合開始2時間前
ロイター記者(スウェーデン)と打ち合わせをする筆者(中央)、左端はAFP記者(フランス)

1.ピッチ上のカメラマン対応

 試合前日に両チームの公開練習があり、その一部が報道陣に公開され、練習開始30分前にカメラマンがピッチ(競技場)に入ります。試合の当日には試合開始2時間前にカメラマンが入ります。まず、AP、AFP、Reutersの3大メディア、次いで試合当事者国、そして最後にその他のカメラマンが入ります。順次好きな場所を取っていくのですが、最後の方になると場所取りでもめます。この仲裁をします。手に負えない時はJAWOCあるいはFIFAのオフィサーを呼んできます。このような場合、われわれはもっぱら通訳に徹します。

 彼らが写真を撮ってもよい場所はあらかじめ決められており(ホーム、アウェイ各80名、計160名の入場が許される)、われわれは両サイドに各2名、計4名で監視。選手入場の5分前にカメラマンをメインスタンド側のハーフライン近くの所定の位置に誘導、そして選手入場、国歌吹奏、記念撮影と続きます。

 試合開始前、ゴールの時、ハーフタイム、そして試合終了直後はサポーターの熱狂振りを撮るため、定位置からはみ出るカメラマンが続出します。またペナルティーキックの時もゴールポスト裏は本来撮影禁止なのですが、これを止めるのは無理です。PK終了次第、彼らを元の位置に戻すのがわれわれの任務です。

 とはいえ、ピッチ上ではあらかじめ想定できないことが発生します。かかる事態に対しては研修通りの対応では混乱を来すこと必至で、現場対応型の商社マンとしての長年の経験がここでは生かされた、と自負しております。ピッチでは常時FIFAのオフィサーが巡回しており、あらかじめ彼らと具体的に事前打ち合わせをして対処したため、彼らからも評価されました。

6月6日
スウェーデン公式練習開始30分前
イギリス人の記者と筆者(左)

2.メディアセンター対応

 世界各国から来る報道陣のよろず相談承り係です。国際電話での問い合わせにも応じます。英語とスペイン語が私の守備範囲でしたが、ブラジルが来ることが決まってからは、ポルトガル語が加わりました。

3.医療通訳

 在神戸6大病院に来院する外国人患者と医者との間に入って、電話による通訳です。私は24時間(0時〜0時)2回、5時間(午後6〜11時)1回の計3回担当。医学書を買って勉強したり、ネイティブスピーカーの友人を訪ね聞いたりと、事前準備が大変でした。電話のベルが鳴るたびに緊張しました。

〈今回のボランティア活動で感じたこと〉

 今回のボランティア活動を通じて痛感したことですが、中には1週間以上も会社を休んで参加している人、阪神大震災での援助に対しお礼がしたかったと遠隔地から参加した人など、日本にはまだまだ立派な若者が数多くおり、明日の日本も大丈夫との意を強くいたしました。特に神戸市役所、Jリーグ各事務局、イベント会社等よりの出向スタッフの献身的な活動には、頭が下がりました。チケット問題等があったにせよ、大会が成功裏に終わり得たのは、彼らの縁の下的な協力があってこそでした。

 ところで、今ロシアでは丸紅が有名なのをご存知ですか。守備の要として全試合で活躍したソロマチン選手が代表に選ばれた時、全国放送で「日本について知っていることは?」と聞かれ、まず最初に「丸紅」と答えました。吃驚したインタビュアーが「マルベニって何ですか」と尋ねたところ、答えは「ママが働いている会社!」。

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