マンスリー・レポート No.28 (2003年3月)
活動会員のレポート
  イタリア語通訳奮戦記
   

細野 良敦(元 三菱商事)

 ABICでは千葉県産業振興センターと業務委託契約を結び、人的サポートの必要な千葉県の中小企業に人材を紹介している。その一環として、船橋市にある医療器具製造・販売会社の(株)ニチオンより、来日するイタリア人技師との技術打ち合わせにおけるイタリア語通訳派遣の依頼がABICにあり、希望者募集を行ったのを受けて応募、採用された。

 ニチオンは数年来、イタリア・ATOS社より「ベッド・パン・洗浄機」を輸入販売し、数百台の実績を上げている。この機械は、病院で使用される尿器、便器、血液吸入瓶を使用直後の状態のまま自動的に洗浄・殺菌するもので、最近の院内感染防止対策などの観点より需要が伸びている。日本国内では、4社の製品が競争しているが、うち3社は輸入品である。

 病院側の使用方法にも問題があるが、この種の機械の通例で過去たびたび水漏れや作動不良が発生したため、今回イタリアより開発・設計担当技師を招き、打ち合わせを行った。

 私は海外駐在20年余りであるが、5年間がイタリアで、当時は英語を話すイタリア人が極めて少なかったこともあり、必要に迫られて体で覚えたイタリア語であった。イタリアという国・言語に愛着を持っていることから、5年ほど前から週1回の会話教室に通い、通常の日常会話ならこなせると自負して応募した次第である。

 通訳業務は、本年2月12、13、14、18日の4日間、朝9時半より夕方7時過ぎまでぶっ通しで延べ36時間に及んだ。

 通訳する内容はすべて、機械の作動方法やトラブル、これに対する対応策、搭載されているコンピューター・ソフトウェアの説明といった、高度に技術的な内容のもので、的確な用語の選択にかなり苦労した。しかし、機械を前にし、白板に図示された説明を訳すことから、技術知識のある日本側が「以心伝心」で理解できる部分も相当あり、双方の意思の疎通とコミュニケーションは図れたと思う。

 現役・駆け出しの商社員時代は、通訳すると言っても、主点は営業面の交渉であったが、久しぶりにビジネスの現場に立ったとの感じがあり、刺激的な4日間であった。

 今回は、中断なく8〜9時間余りを、イタリア人技師が機械の説明を行う横で、ずっと立ったままで通訳するという仕事であったので、頭を使うだけでなく肉体労働的要素も強かったと感じた。いずれにせよ、刺激的な時間を持つ機会を与えていただいたことに感謝したい。

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