マンスリー・レポート No.28 (2003年3月)
活動会員のレポート
  「中南米日系人の帰国前技術研修」を担当して
   

園田 雅敏(元 丸紅)

 ABICは(財)海外職業訓練協会〈(OVTA) 厚生労働省傘下〉の要請で、1月から3月にかけ「中南米日系人向けの帰国前研修」に8名の講師を派遣した。本研修は、バブル期に人手不足解消のため特別就労ビザで来日した「中南米日系人」約30万人の中で、長期のデフレ不況下で多くの失業者が出ていることが背景となっている。

 日系人の3〜4割が高学歴者だが、ほとんどが職工などの低職種労働に就いているため、高度な技術や経営のノウハウが身に付かず、帰国後の就業の見込みもないまま居残りを図る人が多くなっている。

 日本政府は帰国後の就業を容易にするための支援プログラムとして、5年前から技術訓練コースを設け、日系人にOVTAで短期技術研修を行ってきた。これをさらにレベルアップし、帰国後に事業を始める可能性も考慮し、今回新たに企業経営や起業の講義も取り入れたいとしてABICに講師派遣を依頼してきたものである。

 1月24、25日、私はABICから派遣される講師のトップバッターとして「組織と人事労務管理」を担当した。日系人といっても日本語能力や日本社会の理解度、職務の知識と経験の程度が分からないため教材作成に苦労したが、最終的に「組織作り、人事労務管理、能力開発、労使関係、安全衛生管理」の5つのテーマについて基礎的な理解が得られるように、ケース・スタディや経験をできるだけ盛り込んだ。

 OVTAの研修所は千葉県幕張にあり、ホテルのように立派な設備、講義は2日間、朝9時半から夕方5時までの集中研修である。クラスは、30代半ばの日系3世、4世のブラジル人、ペルー人男女2名の計4名。ケース・スタディでは、異文化である日本のシステムとの差異について的を射た質問や厳しい意見も出たが、事例を上げて具体的に説明をしたので、理解を得ることができたと思う。

 受講者は、将来帰国した後は日本関連の仕事で活躍することを希望しており、その能力開発という国際プログラムにABICが貢献できたことは有意義であり、私も過去の経験・知識を生かしてお役に立てたことは幸いであった。

[ABIC担当研修プログラム]
1月24、25日 「組織と人事・労務管理」 園田雅敏  
2月3、4日 「原価管理」 平田一男 (元 三和銀行)
2月5、6日 「財務管理」 山本一良 (元 三菱商事)
2月7、8日 「資金調達」 菊池正郎 (元 三菱商事)
2月12、13日 「ベンチャー企業の成功のポイント」 前田耿史 (元 三菱商事)
2月17、18日 「経営戦略」 佐藤 徹 (元 伊藤忠商事)
2月19、20日 「事業創造とマーケッティング」 布施克彦 (元 三菱商事)
2月28日、3月1日 「在庫・物流管理」 高山元佑 (元 住友商事)
3月10〜12日 「ビジネスプランの作り方」 今井正孝 (元 丸紅)
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