マンスリー・レポート No.29 (2003年4月)
活動会員のレポート
  国際人道医療支援NGO“メドゥサン・デュ・モンド”への参加
   

岸 達也(元 三井物産)

 ABICから、フランスを本拠地とする医療支援NGO“メドゥサン・デュ・モンド”(MDM:世界の医療団)の日本法人が人材を探している、との情報をもらったのは昨年の8月末であった。4月末にそれまでの仕事からも引退して次のステップを考えていたところだった。かつてのパリ在勤中、フランスの緊急医療チームの国際的ボランティア活動に強い印象を受けていたこと、また、かなりさび付いてはいるが、現役時代に使っていたフランス語と海外勤務経験が多少ともお役に立てるのなら、との気持ちもあり、手を挙げてみた。

 フランスで“国境なき医師団”と並び称せられるMDMは、1980年、パリに設立された国際人道医療支援団体で、その使命は、ボランティアの医師を中心に、国境、民族、宗教、政治、思想の枠を超えて、自然災害、武力紛争、政治的圧力の被害者、難民、少数民族、先住民、ストリートチルドレン等を対象に医療援助活動を行うことにある。現在、その活動地域は世界全体陸に及び、プロジェクト総数は300に達しようとしている。世界16ヵ国に活動拠点を持ち、日本もそのひとつである。

東京事務所での打ち合わせ

 池上ABIC理事長の紹介でメドゥサン・デュ・モンド・ジャポンの理事長ともじっくり話し合い、最終的にはパリ本部の承認も得て、昨年11月に仕事を始めた。主たる任務は、企業とのパートナーシップ構築である。MDMへの民間からの寄付金は、従来そのほとんどは個人からのものであったが、今後の活動拡大のためには資金調達に一層の努力と工夫が必要であること、一方、日本の企業の間でも近来、社会貢献がコンセプトとして確立し、新しい企業倫理が定着化しつつあることに鑑み、これから企業へのアプローチを本格化しようという発想である。

 企業とのパートナーシップを確立することにより、MDMの財政的基盤が強化されることはもちろんであるが、企業側にとっても、企業イメージの向上、従業員のモチベーションアップといったメリットがなければならず、かつあるはずだとの考え方に立つ。

 まずは、本部で団体の理念、活動の実態、日本法人の位置付けなど十分に理解してもらいたいとのことで、昨年11月の最初の1週間、パリで本部事務局の幹部職員からじっくり話を聞くことから仕事が始まった。団体の理念は理解できても、今度は日本の企業側の社会貢献に対する姿勢はどうなのか、従来の一般的な認識といったレベルから出て具体的に勉強しなければならないことは多い。そこで、帰国後の1〜2ヵ月は、ABICから参考文献を借りてきて読んだり、日本経団連の関連部門を訪問したり、さまざまな講演会や集会に出てみたりと勉強に集中した。

 並行して、日本企業向けにMDMの理念や活動の歴史を説明した小冊子作りに取りかかった。本部自体が企業との本格的取り組みを検討し始めたのは比較的最近である。そのために作ったパンフレットなどを参考にしながら、「企業市民との協働(企業に息づく人道援助活動)」と題する小冊子が出来たのが本年2月中旬である。

 この間、過去の人脈をベースにいくつかの企業を訪問したが、本番はこれからである。どれだけの成果が上げられるか今のところ全く分からないが、理念を共有する企業との間に、長続きのするパートナーシップを、できるだけ多く築き上げたいと念じている。

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