マンスリー・レポート No.35 (2003年11月)
活動会員のレポート
  インドネシア・バタム島での投資誘致活動
   

JICAシニア海外ボランティア 投資促進アドバイザー 沢田 修吾(元 丸紅)

オフィスにて

 丸紅を定年退職後、JICAシニア海外ボランティアに応募、選考され、2002年4月ジャカルタで研修の後、5月に投資促進アドバイザーとしてインドネシア共和国リアウ州バタム島にあるバタム工業開発公社(BIDA:Batam Industrial Development Authority)に配属され、今日に至っている。任期を来年4月1日に控え、これまでの当地での活動の概略を紹介したい。

 まず、バタム島をご存知の方はどれほどおられるだろうか? バタム島はシンガポールからマラッカ海峡を隔てた東南へ20キロ、フェリーで小一時間の工業地帯と観光リゾートが共存する人口54万人弱、大きさが淡路島の3分の2位の活気のある島である。インドネシア領であるがシンガポール経済圏に属しており、通貨もシンガポール・ドルとインドネシア・ルピアの両方が使われている。1971年にインドネシア政府により設立されたバタム工業開発公社が工業、貿易、観光および港湾輸送の開発、促進を行う行政当局としてバレラン地域(バタム、レンパン、ガラン、ガランバルの4島)のすべてのインフラ開発の企画、遂行ならびに管理を行っており、2003年8月までの外国投資許認可数は累計で651社(35億4,500万米ドル)に達している。

 BIDAには日本から初めてのシニア・アドバイザーとして派遣された。主要業務は日本およびASEAN地域の日系企業のバタムへの投資誘致で、新規投資家に対するバタムの投資機会・環境のプレゼンテーションと、BIDAに対する投資の整備・制度の改善のための助言およびバタムで操業中の日系企業とBIDAとの間の調整業務を行っている。

BIDA別館の前でマーケティング・マネージャーのNovianta(ノビアンタ)氏(右)と。彼は3年間長崎大学に留学した

 バタムを訪問する日本、シンガポールなどからの投資視察ミッション(約25〜50名)とのセミナーではBIDAとのMOU(覚書)調印を行い相互の関係強化を図る一方、工業団地(現在17団地完成)と日系企業訪問を実施している。また、JETRO、BKPM(投資調整庁)と連携してシンガポール、ジャカルタに遠征し、セミナーを企画・開催している。その他少人数のバタム訪問客にもビデオとプレゼンは必ず実施し、投資の具体的手続きやコンサルティングはもちろんのこと、日本人には補足資料として日本語版投資ガイドブック等を作成、配布している。

 日系企業とのコンタクトはバタム日本人会(法人43社・183名と個人13名)に個人会員として入会し、企業訪問や毎月の日系テナントミーティングに出席して情報交換に努めるとともに、ゴルフ、その他の行事で親睦を図り、常に日系企業の動向調査および問題点を分析し、BIDAにフィードバックするように努めている。

 さて、全島が本年末まで保税扱いとなっているバタムについては各種の投資優遇策(輸出入税、付加価値税、奢侈税の免除等)があり、投資家を保護する一方、シンガポールに限りなく近い立地、土地の有用性、豊富な労働力、ほぼ完備されたインフラ、安い投資コスト等を大きな利点として、中規模の製造業、特に労働集約型の部品組み立て産業(電子機器、電器部品、プリント基板、自動車部品等々)が最適の産業として成長しており、松下、サンヨー、エプソン、住友電装等日系企業50社が操業を続けている。

 現在、バタム島を自由貿易地帯にする法案(FTZ法)がジャカルタ中央議会で審議されており、本年末までに可決されれば投資誘致に強力な武器となる。さらに、国際的なリスクの格付けを行っている香港の政治経済リスク・コンサルタントの調査の結果、バタムの格付けがシンガポール、マレーシアに次ぐアジア9ヵ国中第3位(インドネシアは9位)の評価を得ていることからもバタムの投資環境の改善は着実に進んでおり、観光分野への投資の期待も極めて高く、BIDAも観光開発の促進に注力している。

 一口に投資誘致と言っても短期間に成果の挙がるものでなく時間と忍耐を要する仕事であり、昨今の直接投資の減少傾向と中国一極集中傾向を何とか打破すべく最後まで精一杯の努力を惜しまぬつもりでいる。

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