ベネズエラのカラカスへ2004年2月に派遣されて1ヵ月余りではあるが、こちらの環境にも慣れてきたので現地事情をご報告する。
JICA短期専門家として中小企業向け経営コンサルタントの指導・育成にあたっており、現地のコンサルタント諸氏と全国を巡回するのが業務である。
日本はもとよりどこの国でも国家政策の一つとして、中小企業の支援・育成に力点を置いているが、ベネズエラはOPECに名を連ねている産油国でもあるので、中小企業の意味合いも中小の鉱工業に絞っているのが特徴的である。日本と同じように、こちらには中小企業基本法が制定されているし、中小企業庁に相当する政府機関もあり、私の籍もこの政府機関に置かれている。
毎日の通勤に使っている地下鉄はフランスの技術で建設され、今年で20周年を迎えるそうだが、2〜3分ごとに電車が入りなかなか快適。本国に次いでおいしいと言われているフランス料理やイタリア料理店が集まるかいわいがそこかしこに点在するのは、石油で隆盛を極めた三十数年前の名残からまだ抜け切れていない証左と思う。しかしまた、目を転じると地下鉄の階段で物ごいする老人や女性を見るにつけ、富の偏在が顕著であることを感じる。ガソリンや電力はただ同然であるが、つい先日も通貨が対ドル1,600ボリーバルから1,920ボリーバルへ切り下がったことから、輸入依存度が高いこの国の経済には大きな痛手となったようだ。反面われわれ外国人にはまさに買物天国と言える。
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カラカスから車で2時間のマラカイ市のモーターオイル会社を訪問(筆者右端) |
先日こちらの日本週間で日本大使館主催の日本語弁論大会が行われたので見学させてもらった。中国系、チリやコロンビアの国籍の学生も含めて総勢十数人の「ベネズエラの誇り」と題する弁論を聞いた。「世界で一番落差の高い滝エンジェル・フォールズ」「世界で三番目に大きい川オリノコ河」「世界で一番強くて美しい女性の国」などいろいろお国自慢が出ていた。中でも鉱物資源の豊富さは、つとに有名だ。ダイヤモンドが産出したり、「オリムルジョン」と称するオリノコ河で石油や天然ガスの開発計画が進んでいると聞いて非常に興味を覚えた。
非常に可能性に富んだこの国の将来に惜しむらくは、ここ数日続いているチャベス大統領罷免の賛成派と反対派のデモ抗争で、経済・社会の発展が鈍るのではないかと危惧されることである。
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モーターオイル会社で女性コンサルタントと経営診断(筆者中央) |
私の任期もあと2ヵ月足らずとなったが、何とか政治体制等も旧に復して活力溢れるベネズエラに戻ってほしいと願う一人である。
(本稿は3月初旬に寄稿いただいたものです)
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