マンスリー・レポート No.43 (2004年7月)
活動会員のレポート
  (財)横浜産業振興公社での貿易ビジネスアドバイザー活動を顧みて
    古園井 良(元 三井物産)
前列左から蜂谷アドバイザー(元三菱商事・ABIC会員)、筆者、後任の金屋アドバイザー(元トーメン・ABIC会員)、後方左から公社国際ビジネス支援部の長谷部課長、安藤係長、高山職員の面々。

 元気印の横浜市の外郭団体(財)横浜産業振興公社は市内の中小・中堅企業の経営相談業務、産業開発支援、海外活動支援等総合的かつ継続的な支援業務を行っている。また、地元企業の国際ビジネスをきめ細かく、より効果的に支援するために、1999年9月横浜ワールドビジネスサポートセンターを設立し、海外引き合い情報の提供、貿易相談、輸入ビジネス実践セミナー開催、各種イベント開催、海外経済機関へのオフィス・スペース提供、海外企業のスタート・アップオフィス提供等を行っている。ABICとの関係も点から線になりつつあることは周知の事実である。

 私がこのセンターのビジネスアドバイザーとして就任したのは2000年4月である。創業から日も浅く相談業務も多分に手探り状態の中、無我夢中でやっているうちに3年の任期到来、さらに特例で延長された1年もあっという間に終了した。2名のアドバイザーが毎日交替で常駐し、公社派遣の若手職員と共に毎月60件から80件のビジネス・マッチング、貿易手続きなどの相談業務にあたっている。センターに寄せられる相談内容は概ね下記の通りである。

  1. 海外企業から商品や技術を日本へ売り込みたい。客先、輸入業者、提携先を紹介して欲しい。また日本製品を買いたいが、有力なサプライヤーを紹介して欲しい。
  2. 地元企業から製品や技術を海外へ紹介したい。適当なマーケット、関心ある客先、提携先を探して欲しい。現地事情、輸出手続きを教えて欲しい。貿管令との関わりは? また外国製品を輸入したい、サプライ・ソース、仕入先を探して欲しいといったビジネス・マッチングの相談。
  3. 薬品、化粧品、食品を輸入したい、薬事法、食品衛生法による法規制は? 輸入手続きは? 欧米ブランド品の並行輸入をやりたい、国内市場での規制は? といった一般的貿易相談。
  4. 輸入ビジネスを立ち上げたい。貿易実務手続きの流れを教えて欲しい。契約書の作成を指導して欲しい。海外業者と直接取引したい、交渉のコツを教えて欲しい。貿易実務代行業者を紹介して欲しい等の相談もある。

 相談内容によっては経験豊富を自認するアドバイザーでも即応できない分野もある。その場合は海外事務所を有する横浜市経済局、公社国際ビジネス支援部の応援を仰ぐと同時にJETRO、MIPRO他経済機関への協力依頼、特に貿易手続きで高度な判断を要する微妙な問題に関しては税関等の所轄官庁窓口での確認を行う。ABICへの依頼も多い。昨年、地元自動車部品メーカーがメキシコ進出にあたりABICに同地域専門家の紹介を依頼した結果、数ヵ月後同社の進出が具体化した。

 相談者には実務経験がない。無論海外ネットワークもない。資金さえない。あるのは商内意欲だけといった起業志望家も多い。アドバイザーとして心がけてきたことはいかなる相談にも常に相手の目線に合わせ、ないないづくしの相談の中から何かの取っ掛かりを見出し成功に結び付けるようサポートすることであった。相談者からベトナム衣料輸入販売店の開業案内を受け取る。米国科学実験教材メーカーと直接取引できることになったとの喜びの報告、中国茶の輸入ネット販売を開始して1年後商品発送に応じきれないぐらいの注文を受けているとのメールを読む。嬉しい悲鳴が伝わってくる。アドバイザーとしても頑張らなければと改めてヤル気を起こす瞬間ではある。

 地域の公的機関という枠も念頭に置いた上ではあるが、手っ取り早く海外情報を求め、元勤務先に照会するケースがある。昔苦労を共にした仲間、今も同じ僻地で苦労している後輩、元取引先などは喜んで対応してくれる。一方、奔走してようやく取り付けた引き合いや見積書を依頼主に提供しても回答がない。商談ではイエスかノーの意志表示はビジネス・マナーの基本であり、沈黙は金にならぬことを自覚してもらう。

 現役時代、自ら手を挙げ赴いた70年代のパキスタン・カラチ、80年代の韓国・ソウル、そして90年代モザンビーク・マプト等での駐在を含む商社生活30有余年の貴重な経験といわゆる個人ネットワークをこのセンターでの4年間フルに活用しつつ充実した相談業務を遂行できたこと、ひとえに関係者のご指導とご支援の賜物と感謝している。

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