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左から筆者、望月社長、望月専務、高木常務 |
当時ABICの宮内事務局長から長野県のユニークなメーカーの営業支援ができないかと紹介があり、その(株)協伸精機の東京営業所の所長にお会いしたのが2002年初夏であった。この紹介に関心を持った背景には商社に在籍中に大型プロジェクト、その新産業に関わる中小企業の育成や、また長野県にある中小企業メーカーの経営に関与したこともあり、10年にもわたる日本経済の停滞から日本が再生するには、日本の企業のうち99.9%を占める中小企業の活性化しかないという信念もあった。営業の支援といっても、縁談と一緒で経営者が理念を持ち、夢に向かって挑戦する人でないと歯車が噛み合わないのではないかと思い早速お見合いをすることになった。
処暑の頃、長野新幹線に乗り、真田一族の居城があった上田駅でしなの鉄道に乗り換え、涼しい戸倉駅に意外と早く到着した。近くには長野中央道更埴ICもあり、自動車でも東京、名古屋に便利なところに位置している。ここには五木ひろしの歌で有名な千曲川があり、対岸には湯の香りの戸倉上山田温泉がある。2003年9月に更埴市、戸倉町、上山田町が合併して四季彩々の千曲市が誕生した。近郊の坂城工業団地を含めると200社にも及ぶ産業集積地でもある。
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24時間無人運転工場 |
協伸精機の創業者は、大学の文科系を卒業して大手出版社に勤め、その後30年前に独立して郷里の戸倉に精密機械加工メーカーを設立した。現在72歳である。大学の機械科系を卒業した息子の専務は、大手精密製品メーカーに入社して東南アジアで海外勤務を終え、今はこの会社に入社し、専務として技術・製造全般を取り仕切っている。
資本金は1,500万円、年商6.5億円、従業員は35名、創業以来、無借金経営をしている。現在、真鍮製品に特化し、油圧バルブ、空圧バルブ、医療用機器、ダイビング機器、レギュレーター、継ぎ手など50台以上のNC旋盤を使用し、各種部品加工から組み立てまでの一貫生産システムをしている。最近ISO9000を取得し、地場企業の特異な中小企業としてNHKにも紹介され、中国など海外からも見学者がある。
創業社長は、ものづくりとして地域に密着しながらも世界に発進し、従業員を大切にすることを経営理念とし、経営方針は脱下請け、部品から製品への業態転換、ニッチ分野を掲げている。真鍮精密機械部品加工では中国にも負けないコスト競争力、品質、少量多種生産、短納期を自負している。
創業社長の理念だけではなく、工場見学をした時の工場、従業員の行き届いた整理、整頓、清掃、躾を併せ考えると、お互いにベクトルが合い、一緒に仕事をやっていけるという確信を得て、1年半前から営業支援活動に入った。
具体的に少しずつであるが営業支援の成果も得られ、今や営業支援だけの関係ではなく新商品開発の企画の領域までに至っている。この成果の背景にはABICの紹介で、(財)長野県中小企業振興公社で活躍されている地元出身の黒岩相談員(ABIC会員、元
住友商事)による地道な企業発掘が実を結んだと言える。
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