マンスリー・レポート No.45 (2004年9月)
  JETROアンデス「新食材産業育成」プログラム国内流通市場調査受託について
有機食品展−TKO・03
コロンビア国有機食材輸入会社ダーボン・ジャパン社と打ち合わせ(筆者左)

 南米アンデス地域は、16世紀にコロンブスが新大陸を発見した後に欧州に持ち込まれ、現在世界各地で食されている主要野菜等(ジャガイモ、トマト、トウモロコシ、カボチャ、インゲン豆、落花生、ココア等)の原産地である。また、多様な栄養素を持つ穀類、根菜類、果実・果物、薬用植物などの生産地として知られており、一部は日本市場に紹介されているが、日本では未知のものが多い。

 JETROでは、以前から中南米諸国に対する産業育成支援の一環として、アンデス新食材開発輸入促進のため、アンデス地域5ヵ国(ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア)の調査を行ってきた。2003年10月から独立行政法人化するにあたり、従来の単年度事業から中期の3年計画の事業(プログラム)化が可能となり、中南米については3年間の「アンデス『新食材産業育成』プログラム」が取り上げられることになった。

 2003年初めにJETROからABICに対し、本プログラムに係わる現地調査の実施方向性についての提言などの協力要請があった。ABICとしては、アンデスの食材の開発輸入に携わった経験者や食料の専門家もいるので、積極的に協力用意のあることを申し入れた。しかし、アンデス食材の内容や種類については、すでにかなり調査が進んでおり、日本にもデータがあるので、現地の新食材の調査の前に、日本マーケットでアンデス食材の商品化や販売がなぜ伸び悩んでいるのかなど原因を調査し、その結果に基づいて現地調査を行うのがより効果的であろうと提言した。その後、数回打ち合わせを行い、最終的に9月17日付でJETROとの間で「JETROアンデス食材流通事情調査・委託契約書」が結ばれた。

コロンビア産ピタヤ(蔓サボテンの実)
天然のゼリー状果実として日本に輸入

 ABICとしては、会員の中でアンデスおよび食料・食品関係の経験者に呼びかけ、6名からなる「アンデス新食材チーム」を下記のとおり編成し、各々の得意分野で活動を行った。(敬称略)
 〈メンバー〉コーディネーター・全般:森和重(元三井物産)、アンデス地域:日笠徹(元伊藤忠商事)、果実・果物・野菜:奥野英二(元丸紅)、水産:宮西明志(元三菱商事)、日本食品市場:上田勳(元三菱商事)、アンデス地域:竹山克則(元伊藤忠商事)、アンデスハーブ・薬用植物:垣内敏郎(元NTT)
 〈現地アドバイザー〉前田喜章(エクアドルJICA専門家、元日商岩井)、城田佳毅(パナマ在住、元伊藤忠商事)

 事前調査は、アンデス食材約50品目を選び、国内の流通事情(食材の分類、生産地・加工地、主要成分、効能効果、利用方法、輸入実績・取扱業者、日本の法規制、市場特性、成功例・失敗例等)など広範囲にわたり、最終的にはJETROと現地側に対する提言を行うものであった。2003年9月〜12月の3ヵ月間と、短期間での厳しい調査であったが、メンバー各位の努力により密度の高い調査を行うことができ、予定どおり12月末に報告書を提出した。JETROに対しては、ABICとして今後も本プログラム推進に関する協力・支援を続ける所存である。

 本件は、ABICとしてコンサルティング業務を引き受けた最初のプロジェクトであり、今後のABIC業務の一つの方向性を示唆するものとして有意義であったと思考する次第である。

(中南米コーディネーター 森 和重)

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