マンスリー・レポート No.46 (2004年10月)
活動会員のレポート
  NPO法人HANDSの顧問に就いて
    NPO法人HANDS 顧問 藤川 一弘(元 丸紅)
MSHでのテレビ会議(筆者中央)

 2002年、春まだ浅いボストン郊外の森に、MSH(Management Sciences for Health)本部を訪れ、その建物に度肝を抜かれた。エーカー単位で計る広大な敷地に建つ、まるで欧州の博物館プラス宮殿の庭園といった風情、某財団から年1ドルで借りていると聞いて二度びっくり。これが米国のNPOか!

 MSHは30数年前、若きオコーナー氏(現会長)がネパールの山中で、献身的医療活動を続けていた日本人医師岩村氏に大きな感銘を受けて、帰国後ボストンに創立した。今では数百名の専門家を擁し、国際医療協力で全米でも有力なNPOに成長した経緯から、日本とはもともと縁の深いNPOである。

 HANDS(Health and Development Service)はそんなMSHの人的、資金的援助を受け、MSH同様の途上国の保健医療システムのマネジメントと人材育成という使命をめざし2000年に設立され、2001年初めにNPO法人の認定を受けた。たまたま、退職を控えたそのころ、HANDSの立ち上げを支援できる顧問(非常勤)紹介の要請がABICに寄せられた際、小生に声がかかり今日に至っている。語学大好き人間、英語で財務諸表ができるシニアというような条件だったと思う。3年前、当時の宮内事務局長と本郷の座る場所も足りないHANDSを訪れ、どういうことになるのかと思ったのも、つい昨日のように思い出される。

ボストン MSHの本部建物

 そのHANDSもMSHや国連、日本の外務省、JICAやその他諸団体の支援を得て、今では世界の途上国に多数の医療専門家を派遣し、現地の医療機関調査や保健省への提言、AIDS/HIV予防の啓蒙活動、母子手帳の普及、助産婦や看護士教育等の中長期プロジェクトに従事する一方、若い医療マネジメント要員育成のセミナー開催等、活発な活動を展開して、徐々に存在感を増してきている。その間、2001年にはABICからも専門家をホンジュラス派遣していただき、医薬品等の物流管理の支援をお願いした。同時に、顧問が係わる業務のひとつとして、経理規定はもちろん給与、出張、勤務規定等、諸規定の整備も進め、海外各地の駐在員のバックアップシステムも軌道に乗ってきた。

アフガニスタンにて現地スタッフにデータ分析のトレーニングを行うHANDSスタッフ

 一方で、新しい環境と縁ができたおかげで、総合商社に勝るとも劣らぬ世界の広がりも垣間見、NPOの現状認識や日本と欧米のNPOの違い、日本製NPOの今後の課題等考えさせられることも多い。本業の管理分野でも、採算の厳しさから、商社では経験しないような新鮮な発想に出くわすことも多い。順番に講師を決めて時間を効率よく使うBBL方式による出張報告や勉強会、職員の一日の労働時間を細分して対象になるプロジェクトに割り振らないと給与がもらえないHOUR CHARGE方式、本部間接費の算出法、会議に先立ち、目的・得るべき成果・責任者を明示してペンディング事項を避ける効果的会議手法、合理的な業績評価と給与体系、極めて厳格な出張規定等、欧米流NPOの学ぶべき点も多々ある3年間でもあった。

HANDS URL:http://www.hands.or.jp/
MSH URL:http://www.msh.org/
HANDSは国際保険医療協力を通じて、健康で豊かな地球市民社会の実現をめざす医療NGOです。

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