マンスリー・レポート No.59 (2005年11月)
活動会員のレポート
  ウルグアイ事情
    JICAシニア海外ボランティア
ウルグアイ中小企業経営管理
藤澤ふじさわ 裕武ひろたけ(元 ニチメン)

 現在、私はモンテビデオ市にあるウルグアイ工業会議所経営管理センターにJICAシニア海外ボランティア(指導科目:中小企業経営管理)として派遣されています。

 「ウルグアイラウンド」という言葉を知っていても国名に起因するのか、またその国がどこにあるのか知らない日本人も多く、あまり馴染みのない国ですが、1930年のサッカーワールドカップ第1回大会はこの国で開かれその時の優勝国だったり、また我々世代には懐かしい英国映画の「ドイツ戦艦グラフシュペーの最後」の舞台となったのもこの地です。この国は20世紀後半まで大変豊かだったこともあり、往時の名残はモンテビデオ市内の贅を尽くした数多くの建造物などでも十分想像ができます。

 正式国名はウルグアイ東方共和国(西語で)、首都はモンテビデオ市、国土面積は日本のほぼ半分で人口約340万、人種はスペイン、イタリアの移民とその子孫が大半で原住民とその子孫は皆無に近く、スペイン語を公用語とし、南欧(ラテン系)を中心とした白人の国という感じです(因みに日系人を含めた在留邦人は400名程度です)。

職場の仲間(筆者後列右端)

 独立は1825年、建国以来立憲共和制を敷き一時期の軍政下を除いては、中南米でも代表的な政治体制の安定の国です。国民性は一般的に鷹揚な性格と礼儀正しく親切、社交的であり、ヨーロッパの様々な国の伝統文化が混在しており異文化に対する受け入れも寛容と言えます。教育水準は中南米の中でもトップレベルで識字率は98%に上ります。この国がかつては先進国の一角をなしていたことは間違いないはずです。

 しかし、近年の経済の停滞が大きな問題となっており、2004年のGDPは全体で132億ドル、1人当たり4,078ドル、外貨準備21億ドルに対し公的対外債務は110億ドルに達しています。輸出入合わせた総貿易額は57億ドルで若干の入超、主要輸出品は肉類、米、皮革品および羊毛などの一次産品、輸入は機械、輸送機械、化学製品です。

 貿易相手国の上位は隣国アルゼンチン、ブラジルおよび米国で占められ1999年以降のブラジル、アルゼンチンの経済危機の余波を受け、2002年には過去最悪の状況に陥りました。20世紀初めから第二次大戦後のある時期までの世界の食料庫としての位置付けを現在もそのまま引き継いでいる産業構造から、外貨の稼ぎを一次産品に依存しています。

 今のこの国の最大の課題は、最貧困者の撲滅、失業率の改善、若者と優秀な人材の海外流失防止などですが、その意味でも国内の経済環境の早期改善が求められています。他方、日本の半分の面積に横浜市規模の人口と農牧林業以外特徴のある産業を持たないこの国が独立国として運営していることは立派なことと思います。この国の経済の建て直しに今何が必要なのかを考えるにつけ、そのヒント付けの一助に私がここに派遣されているとの思いですが、一方では安定した国情、ほぼ単一民族の下、彼らの自助努力を持ってすれば容易に経済復興ができる環境にあると思います。

川幅120kmのラプラタ河に落ちる夕日

 同じような産業構造のアルゼンチンとブラジルの両大国に挟まれ、諸外国にこの国の存在感を示すにはサービス面の改善による競争力強化が必要でまた最善の道であると思います。米国の大手投資会社のこの国の調査レポートでも国政の安定、高教育水準、英語およびポルトガル語を理解し、比較的安い人件費を根拠に挙げ高付加価値商品の製造業とサービス業を中心とする第三次産業の投資呼び込みを提唱しています。私の任期は残り半年余りですが、ここの経営者達にそのような考え方を持つようアドバイスしています。

 終わりに、私の職場は貿易、投資関係の仕事を目指す学生、若者との接点が多いこともあり、日本の総合商社の機能と活動についての解説を頻繁に求められます。私の38年間の商社生活で経験したいわば「生きた材料」を彼らに紹介できる機会をうれしく思い、積極的にWORKSHOPを開くなどこの国の将来を担う若者との接触を大事にしています。

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