ABIC中小企業支援グループの依頼により首記研修の講師を担当した。1月23、26、31日の3日間、各5時間の計15時間で、受講者は中小企業幹部の方々だった。
この話を引き受けた時、私には以下の3点が懸念材料だった。第1に「リスク管理」の範囲、第2に受講者の予備知識の程度、第3には15時間の時間配分である。
第1については、主催者側とのメール交換により解決し、第3の時間配分も各日90分が3回と割り切って対応した。問題は第2で、主催者側からは、受講生の知識はまちまちで、初心者をベースとして講義してほしいということだった。しかし、テキストは書類として残ることもあり、またABIC代表という立場もあり、ある程度のレベルとすることで了解を取り、作成した。
しかし、いったん講義を始めてみると、これらの心配は単なる危惧にすぎないことが分かった。質疑応答は当初より活発で、かつ実務に基づく質問が多く、受講者のレベルの高さに気が引き締まる思いだった。私もできるだけ経験に基づく話をさせていただき、また内容説明についても、例えば、外為リスクは松坂と井川の契約金、金利リスクは日本銀行の1月の利上げ見送り、カントリーリスクはサハリン2と、手近なトピックスを例題として説明した。また、コンプライアンスについては、3県知事の逮捕、雪印、不二家、FTA・EPAは1月の東アジアサミット(フィリピン)、環境問題は昨年11月にナイロビで開催された地球温暖化防止締約国会議などである。この他、B/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)、新会社法施行(昨年5月)、契約、輸出入関連法規、特恵関税、クレーム、仲裁、PL法(製造物責任法)、ダンレポート(海外企業情報レポート)等々が講義内容だった。
私は、入社2年目の1961年から2年間、全社のD/P(手形支払書類渡し)、D/A(手形引受書類渡し)を1年上の先輩と2人で担当していた。当時は繊維輸出が盛んなころで、輸出手形保険の具体例については、こと欠かなかったし、また駐在18年を含め、中・長期出張を含めると20数年間、中南米にいたことから、リスク管理のケース・スタディーについても、体験談を話すだけで教材となった。
今回の講義を通じて痛感したことは日本の産業基盤の強さだった。今回の受講者のような方々が支えておられると実感した。事前準備に始まり、一番勉強させてもらったのは私自身であったと感謝している。受講者に恵まれ、本当にやりがいのある3日間だった。
最後に余談だが、「武士の一分」に涙した。まだご覧になってない方は是非ご覧ください。講義の中で、中南米には明治生まれの曽祖父母、あるいは祖父母から直接学んだ大和撫子、あるいは大和魂を持った日系の若者が数多くいることを話したが、昔の日本は精神的に豊かだったことがあらためて思い出された。
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