2006年度に文部科学省が採択した「世界を対象とした地域研究推進事業」の一つに「アジアのなかの中東:経済と法を中心に」(http://www.econ.hit-u.ac.jp/~areastd/index.htm)があり、研究代表者は一橋大学大学院経済研究科の加藤博教授です。
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日本語・中国語・アラビア語など5ヵ国語版作成された研究紹介パンフレット |
この調査の目的は、社会のニーズに対応する中で、中東をアジアの中で理解する視点を得て、欧米中心の中東地域研究から脱し、日本と中東の直接的な協力関係に立つ、学際的かつ地域横断的な中東地域研究を構築することにあります。想定されている社会的ニーズとは、法と経済における軋轢・摩擦の文化的背景を解明し、日本・中東間における認識・評価上のミスマッチを解消することによって、中東を日本にとって身近なものにすることにあります。
この調査では、日本内外の研究機関・研究者・留学生・民間企業関係者などのネットワークを形成し、中東研究者のグループが企画されたプランに沿って、第1に、日本と中東の関係機関や関係者に対し、アンケートとインタビューによる相互認識に関する意識調査を、第2に、中東各地において、ひと、もの、かねの移動を中心とした、社会経済調査を行うことになっています。
ABIC会員には多くの中東駐在経験者がおられ、また現在も日本貿易会会員の商社は中東各地に駐在員を派遣しています。中東の日本人コミュニティにおける商社関係者のプレゼンスは大きいのが現状です。昨年このプロジェクトが企画された時に、加藤教授と研究者のグループからABICに協力の依頼がありました。
ABICとしても日本と中東の相互理解が深まることや、中東で経済活動や日常生活を行っている日本企業、駐在員に、現実的かつ実践的な情報を提供することは意義あると考え、全面的に協力しています。
具体的には、昨年10月24日に中東駐在経験者15名にABICに集まっていただき、研究者グループにその経験を話していただく懇談会を持ちました。「さすが商社の人の経験は深く、多方面に渡り意義あるものが多くある」と今後の調査に役立つことが、研究者グループに確認されています。また法務研究者は、商社の法務部を訪問し、中東における法体系やその運用の現状について包括的な話も聴取することができました。
今後はABICの会員の中東駐在経験者と、現在中東に駐在や居住されている方々へのアンケート調査を行っていきます。また研究者が実際に中東各地を訪問し、面接調査することも本格的に始まっており、この調査は今後4年継続される予定です。
(大学講座担当コーディネーター 谷川 達夫)
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