マンスリー・レポート No.80 (2007年8月)
活動会員のレポート
  シリア事情
 シリア・ダマスカスでの廃棄物総合管理支援活動
  志田しだ 正幸まさゆき(元 住友商事)

 昨年3月、JICAシニア海外ボランティアでシリア・ダマスカスに地方自治環境省のアドバイザーとして赴任し、1年間の支援活動を終え、本年4月中旬に帰国しました。

 一般に中東諸国の印象は湾岸戦争、イスラエル・パレスチナ問題等々の紛争が絶えず、危険な国と思われがちです。しかし、シリアは紛争6ヵ国に国境を接していますが、極めて安全で平穏な暮らしを人々は享受しています。多分、社会主義体制を堅持し、地中海文化圏の影響を受けているのではと思います。外国人である我々にも開放的であり、安全で住みやすい国でした。

環境省の職員と共に
ゴラン病院:イスラエル軍により破壊されたゴラン高原にある病院

 シリア全土には数々の歴史的遺跡があり、最近では日本から観光客も訪ねるようになりました。ホテル事情もかなり充実し、Four Season、Meridian、Sheraton等々の一流ホテルが営業されており、各国から観光客を受け入れています。

 滞在中は、イスラエルとヒズボラの紛争でレバノン難民が押し寄せ、また、最近ではイラク国内の宗派争いに端を発しイラク難民がシリアへの移住(一説によると100万人)による都市人口が増え、住宅賃貸料の高騰、一部地域で犯罪が増えてきています。また、人口増による車両が年々増え、朝夕のラッシュ時間帯は激しい渋滞で、かつ運転マナーも最低で危険この上ない状況です。早晩、都市機能に重大な影響が出ると予測されています。日本から都市機能改善計画書作成に調査団が数回、ダマスカスに来ています。

 滞在中で印象に残った出来事は、イスラエルとシリアの国境紛争の地点、ゴラン高原を視察し、「国連兵力引き離し監視隊:United Nations Disengagement Observer Force、通称UNDOF」、6ヵ国から約千名の派遣部隊(オーストリア、インド、カナダ、ポーランド、スロバキア、日本)に我が国の自衛隊員45名が加わり物資の輸送活動に従事している様子を見聞したことでした。

 本業のボランティア活動は、環境省に席を置き、当国の廃棄物処分場管理の技術指導を行ってきました。

 当国の廃棄物処理方法は埋め立て処分であり、回収された廃棄物は埋立地に搬送、敷地内に投げ捨てるだけで、排水処理、排ガス処理施設等は皆無で環境公害源となっています。具体的な活動として、各州に設けられている廃棄物処分場を視察し、処分場に必要な諸設備の設置、運営管理等の技術的アドバイスを実施しました。幸いにも当方のアドバイスに従って、一部の州では改善工事を開始するまでになり、技術指導の成果の現れと自負しています。


ウマイヤド・モスクにて
シリア・ダマスカスで歴史的に有名なモスク

 近年、日本とシリア間の商業活動は停滞している模様で、日本企業はヨルダン等に事務所を移転したという状況です。現在、シリアは大使館関係者、JICA関係者、国連軍に参加の自衛隊員が主です。JICAシリア事務所では無償援助、並びに人材援助として青年海外協力隊員、シニア海外ボランティア要員、各種専門家(総計約80名)を受け入れ、各分野で活動しています。

 無償援助として消防自動車、廃棄物収集車(60数台のゴミ収集車を今年夏までに納入する計画が進んでいる)、の提供を実施しており、シリア政府から高く評価、感謝されています。

 多くの方が、過去にシリア勤務を経験されたことと思いますが、最近のシリア情勢の一端をご紹介致しました。

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