マンスリー・レポート No.81 (2007年9月)
活動会員のレポート
  パラグアイ共和国に暮らして―生活と仕事
  JICA専門家 パラグアイ商工政策アドバイザー  川名かわな 陽之介ようのすけ (元 住友商事)

 私が現在、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の長期専門家として勤務し生活をしているパラグアイ共和国および「商工政策アドバイザー」の仕事につき紹介します。

 眼下に広がる「豊かな緑と明るいオレンジ色の屋根が点在する平坦な大地」というのが2005年10月に初めて赴任した時のパラグアイの第一印象でした。

 パラグアイ共和国の位置は、南米大陸のほぼ中央にあり、北はボリビア、東をブラジル、南と西をアルゼンチンの3ヵ国に囲まれた内陸国です。気候は亜熱帯性(夏季の日中は40℃程度になる)で、日本の約1.1倍の国土に人口600万人弱で牛の数が人口の倍近くというのんびりとした国です。

 私が住んでいる首都のアスンシオンは、人口約51万人(近郊を含む首都圏では約136万人程度)で当国の政治・経済の中心です。パラグアイ人の約97%が原住民のグアラニー族と白人(主としてスペイン人)との混血で、残りはヨーロッパ系の移住者、原住民、東洋系等です。邦人及び日系人は約7千人で、日本からの移住者およびその家族も多く、昨年(2006年)は「移住70周年」にあたり、当国大統領も出席して記念式典が大々的に開催されました。

商工大臣(左端)と次官(中央)と共に(赴任当時)
首都アスンシオン
1537年にスペイン人により建設された。パラグアイ川の東岸に位置し、内陸都市であるが国際貿易港として発展。「森と水の都」とも言われる
パラグアイ共和国大統領(中央)も出席した「日本人移住70周年記念式典」
地方出張時の写真(CONCEPCION県・県庁事務所前で)地方振興局長と共に

 さて、私の長期専門家(商工政策アドバイザー)の仕事の内容を簡単に紹介します。派遣先はパラグアイの中央官庁の1つである「商工省」(日本では経済産業省に該当する)です。仕事は、商工業分野全般の広い範囲でのアドバイス業務が中心で、対象業務のメインは以下です。(1) 基礎情報(商工政策・形成メカニズム)分析、(2) 商工省関係情報システム整備、(3) 地方産業振興、(4) 中小零細企業強化支援、(5) 経済競争力強化推進、(6) マキラドーラ制度支援、(7) バイオ燃料生産促進支援、(8) 輸出促進。

 上記はいずれもパラグアイの経済・商工分野にとって重要な政策ですが、わずか2年間の派遣期間でこれだけ大きな命題で目に見える実績を上げるのは、中々難しいことは容易にお判りいただけるかと思います。従い、残り少ない任期の中で「情報システム・データベースの整備」、「バイオ燃料の生産促進支援」、「競争力強化と輸出促進」の3つに的を絞ってできるだけ具体的な成果を上げるべく努力しています。


 パラグアイは豊かな自然がまだたくさん残っており、国民性も素朴で温和です。加えて70年の歴史がある日本人移民の先輩達の大変な苦労と努力のお陰で日本人への評価が高いこともあり、対日感情も非常に良く、日本人にとっては住みやすい国です。もちろん南米特有のいい加減さ(日本人から見た場合の)、時間のルーズさなどもありますが、住んでみればパラグアイは愛すべき国であり、パラグアイ人は愛すべき国民です。

 パラグアイが、ブラジル、アルゼンチンという南米の大国に囲まれた小国ながら、この国の持つ良さを保持しつつ独自性を活かした競争力を身につけ、将来、一層逞しく存在感を発揮していく国となることを期待しつつ筆を置きます。

 “Viva, Paraguay”(パラグアイ 万歳)。

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