マンスリー・レポート No.84 (2007年12月)
活動会員のレポート
  地方自治体・中小企業支援業務 あれこれ
    高廣たかひろ 次郎じろう (元 三菱商事)

 最近の自治体・中小企業支援活動の状況を2、3ご紹介する。

1. 自治体支援の状況

 現在、ABICは、4自治体と6件の年間業務委託契約を締結し、また約15の自治体、公共団体との間で支援・協力関係を持ち、多方面にわたる活動を行っている。
 自治体・中小企業支援に際しABICに期待されているのは、ABIC会員の知識・経験・人脈をベースとした販路開拓支援・国際化支援、企業誘致支援に集約されているといえる。
 通常、自治体への支援は予算措置の枠内で行うが、毎年の予算確保は難しく、1年限りの支援で終わってしまうこともある。まず道筋をつけて、後は企業の自己負担で取り組むよう指導しているようであるが、企業側も余裕がなく、また費用対効果の問題もあって簡単には進まない。企業が費用を負担してでも支援継続を依頼されるよう、一層 親身になってアドバイスをすることが望まれる。

(1)販路開拓支援
 比較的遠隔地にある企業は、首都圏の巨大な市場への参入を希望し、管轄する自治体も地元経済の活性化のため、首都圏での販路開拓支援を積極的に進めているところが多い。よほど特殊性のある商品でなければ市場参入は簡単ではないが、それでも営業力、人脈を活用した販路開拓の効果は侮れない。西日本のある自治体において、地元企業の首都圏進出や商品販路開拓を後押しするため、ABIC会員複数名がナビゲーターとして採用され、首都圏でのマッチングや展示会および地元での相談会に注力しており、その成果に期待がかけられている。
 東京都でもビジネスナビゲーター制度があり、総勢60名のうち10名のABIC会員が都内中小企業の製品を首都圏で販路開拓するため活動している。

(2)国際化支援
上記のような東京都のビジネスナビゲーターのケースもあるが、通常、首都圏内の自治体による企業支援は国際化支援のケースが多い。海外進出、販路拡大等のためパンフレット、ホームページ等の外国語訳、輸出入手続き、海外市場状況等の解説、海外同行出張等々でABICから適材を紹介している。1日のレクチャーで終わるものから、長期にわたって支援するものまで多岐にわたっている。今年3月には、40名のフランス農業ミッションが来日し、自治体の要請を受けて4名のABIC会員が事前の受け入れ準備からミーティング、農場視察など全行程にアテンドし、通訳支援を行ったケースもあった。

(3)土地活用のため企業誘致
 多くの自治体で開発した工業団地への企業誘致活動の中でも外資系企業の誘致を進めている自治体からは、商社OBの多いABIC会員の知識、人脈が頼りにされている。
 千に一つといった確率の活動であるが、正式にアドバイザー等の委嘱を受けたケースや、登録制で仕事を請け負い、成功報酬・出来高払い形式のものも含めて、10数名の会員が地道な活動を続けている。自治体の期待に沿えるよう、会員各位の引き続いてのご尽力をお願いする次第である。

2. 企業よりの求人
 ABICのホームページを見て直接求人の問い合わせをしてこられる企業も増えている。概して企業の経営面への参画を希望するもので、中長期の雇用契約になることから、年令制限のほか、個人経営者との相性の問題等が重要となる。会員各位が極力多くの機会を捉えて活躍していただけるよう頑張っている。
 求人案件のほとんどについて会員各位から手を挙げていただいているが、応募がなく断念したケースもある。最近の例では、@工場の現場における金属加工の設計・製作のエキスパート A橋梁など大型構造物の溶接・設計技術者、という求人であったが、残念ながら応募者は皆無であった。メーカー出身で技術系の会員登録も増えてきているので、将来はこのような依頼にも応えられるようになることを期待している。

3. 適材の検索作業
 昨年初め、会員各位のお手数を煩わしたが、会員登録情報について新たな項目のアンケートを実施してデータベースを更新し、よりきめ細かな検索が可能となった。とはいえ求人内容は千差万別で、現システムでも完璧とはいいがたい。極力条件に合致する会員を検索の上、募集メールの発信に努めているが、関係がないような募集案内をお届けすることがあるやもしれず、今後ともデータベースの改善に努めたいと思っている。多くの会員各位にご案内をお届けしたいと思う一方、関係がないようなメール配信はご迷惑となるので極力避けたいと思うこととのジレンマである。
 なお、上記会員再登録の未了やメールアドレス変更未通知の方は、この機会に是非事務局への通知をお願いしたい。

 ABICの自治体・中小企業支援活動は、現在佐藤コーディネーターと二人で手分けして担当しているが、お蔭さまで順調な成果を上げている。
 活動の参加延べ人数の推移は、05年度98名、06年度147名、07年度は4〜9月の上期実績で既に139名に達している。一部例外を除いてであるが、どのような分野でも依頼に応ずることができる会員を擁するABICは、大変な頭脳集団であると個人的にも自負している。
 会員各位のご期待に沿えるよう、今後とも鋭意努めていく所存である。一層のご協力をお願い致したい。

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