グローバル化が進展する中で、資源高・環境問題など企業を取り巻く経営環境は日々変化しており、企業は一層困難な経営の舵取りを迫られている。また近年、食品の質や安全の軽視による事件や不祥事、自動車・家電等の製品欠陥による事故やリコールが多発して大きな社会問題になっている。
本書は、こうした今日的課題に対する問題意識に発して、グローバルな視野で新たな経営環境に適応するための環境適応戦略と、経営や組織の質及び個人の資質を向上させるクオリティ・マネジメントの戦略性をテーマとしている。理論だけではなく、スタンフォード大学の協力を得て実施した在米国日系製造企業の調査結果を踏まえて、「品質を重視する施策を徹底して実践している企業ほど業績成果を上げている」事実を明らかにし、グローバル市場で競争優位性を築く経営戦略の成功事例を挙げて、わかり易く述べている点も本書の特徴である。
著者の中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科教授の宮川正裕氏は、ABICの会員でもあり、伊藤忠商事や自動車部品メーカー勤務を通じて自らオペレーションズ・マネジメントに永年携わって来た経験を有する。
日本企業の海外展開について述べた著書は多いが、グローバル経営とクオリティ・マネジメントの戦略性に着目し、中国や米国で事業展開をする日系企業におけるリサーチ結果を踏まえて日本発のグローバル・オペレーションズ・マネジメントについてまとめた本は少なく、研究者のみならずビジネス関係者への示唆に富んだ書として注目される。
|