マンスリー・レポート No.99 (2009年3月)
活動会員のレポート
  経済危機の影響下のブラジル人子弟支援

寄贈した人体模型で学習
寄贈した遊具で遊ぶ子供
寄贈したパソコンで学ぶ生徒

 1990年代から始まった日系ブラジル人の日本への出稼ぎは、2007年末には家族を含め32万人に達し、日本の産業の下支えをしてきた。しかし、日本人ブラジル移民百周年に当たる昨年(2008年)後半に発生した世界経済危機が、在日ブラジル日系人社会に多大な影響を与えている。
 2005年度から2008年度まで、ABICブラジル支援グループは、三井物産が長年にわたる友好国ブラジルに対する社会貢献事業として、約3万人いると推測される学齢期ブラジル人子弟を対象に行なってきた下記3つのプロジェクトの実施業務を委託してきた。子弟3万人の内訳は、1万人が日本公立学校、1万人がブラジル人学校に通学し、残り1万人が不就学・不登校となっている。そのため、プロジェクトも次の3方法で行っている。

1.ブラジル人学校支援:
現存する約100校のうち、ブラジル政府の認可を受けている52校を対象に5年間で30校を選び、各校から要望のあった5百万円相当の資機材を現物で支給をしている。(合計1.5億円)

2.副教材開発(公立学校へ通う子弟の副教材作成):
東京外国語大学に依頼してネットでダウンロード可能な方式を採用し、2005年から開始し2008年末に完了した。(教材は漢字と算数)これに対するアドバイス業務を実施。

3.不登校・不就学生徒に対する支援(不良化を防ぐため):
ブラジル人シスターの指導するNPO法人在日ブラジル人を支援する会(SABJA)に対する支援。SABJAはブラジル人が集住する都市各地でイベントを実施し、不就学の青少年を集めて就学や進学へのアドバイスや指導をしており、この業務に対する協力、支援である。

 この5年間の実績については、三井物産/ABICに対し在日ブラジル大使館やブラジル人学校協会から高く評価され、謝辞や感謝状などをもらっている。
 しかしながら、昨年末から日本を襲った世界経済不況の波は、ブラジル人子弟にも過大な負担を強いている。20年近く在住する日系ブラジル人のほとんどが派遣業者経由で働いているため、派遣切りの対象になっている。特に、親が学費を払えないため、ブラジル人学校の生徒が軒並み半減し、多くが経営難に陥っている(退学生徒は、帰国か自宅にいるケースが多い。日本語能力の不足のため日本の公立学校への転校は少ない)。しかも、ほとんどの学校が日本では私塾扱いになっているため、日本の公的支援(国・県・市町村)が受けられていない。

 この様な危機的な状況の中で、今後、ブラジル人子弟への支援をどのように行うべきか、三井物産からアドバイスを求められており、集住している地域(北関東、東海、近畿、長野、山梨)を回り実態調査を行っている。まだ結論が出てはいないが、問題点を集約すると下記である。

寄贈した運動場で遊ぶ生徒
移転した教会での授業風景
放課後の日本語教室

1)ブラジル人学校:長期滞在する以上は、ブラジル人学校などやめて日本の公立学校に行くべきとの厳しい意見もあるが、日本語を話さないあるいは帰国を望む人たちもあり、受け皿としてのブラジル人学校の存在は必要である。しかしながら、一民間企業が学校の求める財政的な救済をする立場になく、一部生徒への奨学金の供与ぐらいである。

2)日本の公立学校:経済的負担の大きいブラジル人学校に行けない子供たちが日本公立学校に就学するが、日本語が十分でないため、特に高学年生が不登校になるケースが多い。残念ながら、外国人労働者受入れに対する国の方針がない日本では、外国人年少者日本語教育のシステムが出来上がっておらず、早急な対策を立てるべく政府・文科省に提言している。

3)基本的な定住外国人受入体制の整備:不就学になっている原因は、親の失業で学費が払えない結果であり、短期的な労働者の受け入れではなく、長期的な視野での定住外国人の総合的受入体制(外国人管理、生活社会環境充実、教育の整備など)を策定するべきである。

 少子高齢化社会の到来で、将来的に労働力不足が予想される日本は、外国からの優秀な人材の受入れが必要とされている。既に在住する3万人の日系ブラジル人子弟はその人的資源の一つであり、日本語・ポルトガル語のバイリンガルとして、将来の資源大国で日本の重要なパートナーであるブラジルと日本の掛け橋となり得る子供たちであり、十分な教育機会を与えることが最重要課題と考える。

(中南米担当コーディネーター  もり 和重かずしげ

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