2007年11月にカンボジアの投資環境改善・外資の誘致促進のアドバイザーとしてプノンペンに赴任して1年と4カ月が過ぎた。13年ぶりに見たプノンペン市街は日本車であふれ、世界各国から援助機関、NGOが集まっているためか、国際色豊かなレストランが立ち並ぶ活気にあふれた街に変貌していた。もちろん日本食レストランも10件以上は存在し、値段も安くて単身赴任の身にはありがたい生活環境が待っていた。
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アプサラダンスの役者衆と |
カンボジアは、国土面積18万平方キロメートル(日本の約半分)、人口1340万人、農地と森林が多く、アンコールワット寺院で有名な国である。ベトナム戦争終結後の1975年には悪名高きポルポト政権の誕生、1979年にはベトナムに支援されたヘンサムリン政権の誕生、以後、三派連合との内紛の時期が続いた。日本では、まだこの当時の混乱した政治のイメージを持っている人が見受けられるが、今日では平和を享受している国民の姿が見られる。2008年7月に第4回総選挙が実施され、フンセン首相の率いる人民党(CPP)が123議席中の90議席を確保し圧勝した。そこには国民が平和を享受し、生活インフラの改善を評価し、現在の政権の経済政策を認めている姿が見られ、少なくとも今後5年間は一層の安定した政権運営が見込まれている。 国内の政治が安定してからまだ十数年しかたっていない若い国である。近年、目覚ましい経済成長を遂げており、建設ブームも見られ、あちこちで近代的ビルが建設中である。2004〜2007年の間は毎年10%以上の経済成長を達成した。2008年度は国際的金融危機の影響を受け7%にとどまったが、2009年度はそれでも約5%の成長が見込まれている。縫製業、製靴の製造業及び観光開発事業が経済成長を牽引している。
日本との外交関係は、昨年2008年に国交樹立55周年の節目を迎え、各種記念行事が執り行われた。日本は最大の経済援助国として、カンボジアの和平と経済復興に大きく貢献してきた。しかし、残念であるが日本からの投資は極端に少なく、外国投資全体の1%以下にとどまっている。2008年7月末には日・カ投資協定が発効し、投資の保障、内国人待遇など最大級の優遇措置が供与されているので、これから日本の投資が増加すると期待されている。日本の技術、経営手法、特に中小企業の進出によるノウハウの移転が強く望まれている。ちなみに1994年以降2008年までの投資承認額は総額257億ドル、国別投資承認金額では中国、韓国、マレーシアの順となっており、日本は13位にとどまっている。日本はなぜカンボジアに来てくれないのか、というカンボジア政府の期待にこたえるように、投資環境の改善が、JICA専門家としての小職の一つのミッションである。
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製靴工場訪問 2009年2月 |
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アンコールワットにて 2008年10月 |
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メコン川沿いの桜並木 |
カンボジア投資の魅力はなんだろうか?政治の安定、高度経済成長、比較的安価な労働力、GMS(Greater Mekong Sub-region)の地理的中心地、天然資源(石油・ガス、森林、鉱物)、広大な農地、などがあげられる。経済政策での第一の特徴は、開放的自由資本経済政策である。外国起業家に対しては国内起業家と同様に差別のない企業活動が保障されている(唯一の例外は、外国企業は土地の所有ができないこと)。第二には、USドル経済圏であること。為替の取り扱い、送金などの制限がなく、自由であること。カンボジアの通貨であるリエル通貨は、外国人にとっては補助通貨として使われている。海外で事業投資を考えている方はぜひカンボジアにお越しいただきたい。
日系企業の進出はまだまだ少ない。カンボジア日本人商工会の会員は43の企業、団体から成り立っており、商社、建設業のほかオートバイの組み立て、銀行業、物流業などが活躍している。最近ではカンボジアの主要産業である縫製業、製靴業への日本企業の進出も見られる。
投資の基本法としては2003年に改定された「投資法」がある。内国人と外国人の差別はなく、基本的にはあらゆる事業会社が外資100%で設立が可能である。一定の基準を満たし、「投資適格プロジェクト」としての認定を受ければ、法人税がMAX.9年間免税される。工場建設資機材の輸入関税の免除、さらに輸出事業に対しては原材料に対する輸入関税も免除が受けられるなどの特典が与えられる。さらに、50ヘクタール以上の広さの特別経済区が20か所以上も開発が進みつつあり、インフラの整備が進められている。シハヌークビル港に隣接した経済特別区では日本の円借款が供与されている(詳細はカンボジア開発評議会「カンボジアの投資ガイドブック」を参照)。
カンボジアには828人の在留邦人(2007年10月現在)が活躍しており、インターナショナルスクールが数校あるほか日本人補習校(土曜校)も運営されている。アンコールワット寺院を見たいという人も含めて、ぜひカンボジアを訪れていただき、活気のある若い国の姿を見て欲しい。
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