世界に先駆け、16世紀にはポルトガルは日本への南蛮文化の担い手として接点があったが、いつの間にか忘れ去られ現代に至っている。
商社マンとしてポルトガルの首都リスボンでの駐在3年(1983年〜1986年)の間に見聞し、体験したことを紀行文風にポルトガルの地方都市25箇所に一話として25編をまとめたものである。駐在した3年間に付き合ったジェトロ日本人駐在員とポルトガル人夫婦の離婚話を中核に、今も残るポルトガルの大航海時代の遺産跡に繰り広げられる素朴且つ多様な人間ドラマである。
ポルトガルの地方都市を舞台に、著者とポルトガル人および現地に住み着いている日本人との出会いの中から、特に印象的だった場面を描き出し、ポルトガル人の生活観や人生観に学ぶべきところを書き綴った。商社マンとして海外に余儀なく単身赴任する人たちのために、現地での付き合い方法や楽しみ方など幅広く参考になるものであろう。
ビジネスの社会から離れ、私生活の観点から、ポルトガル語の「サウダーデ」(郷愁)の持つ意味が、甘い思い出や懐かしさ、会いたいが会えない切なさの甘美と表裏一体となって胸に迫ってくる内容になっている。 |