マンスリー・レポート No.55 (2005年7月)
ジェトロ「アンデス乾燥果実普及市場調査」受託について
    ABIC中南米コーディネーター もり 和重かずしげ(元 三井物産)

 2003年末にジェトロより「アンデス新食材産業育成プログラム」の国内流通市場調査を受託したが(マンスリー・レポートNo.45(2004年9月)参照)、そのプログラム推進の延長線として2004年11月に「アンデス乾燥果実普及市場調査」の業務を受託し、本年3月末に報告書を提出した。今回の対象品目は、いまだ日本に紹介されていないアンデス地域の下記乾燥果実4品目について対日輸出の可能性を実地に検証する調査であった。

乾燥果実サンプルのモニタリング調査

 調査対象品目はボリビア産乾燥バナナ、マンゴー、パイナップルの3品目、コロンビア産乾燥食用ほおずき(Physalis)(1品目)の合計4品目である。

 本件については、ABIC会員高橋征三氏がマーケット調査会社キーリサーチネット(株)を経営され、すでにジェトロから加工食品調査受託の実績もあるため、同氏との共同プロジェクトとしてジェトロに応募し、受託したものである。

 具体的には、現地からカタログ、サンプルを取り寄せ、乾燥果実食品輸入業者30数社にカタログを送り、興味を示した14社にサンプルを送付し、試食結果を調査票に記入し返送してもらう。同時に、4社を直接訪問し、その場でサンプルを試食してもらい、そのコメントを聞くとともに、パッキングの材質やデザインに対する評価をしてもらう、というモニタリング調査であった。

乾燥果実のサンプル比較

 日本の加工食品マーケットの中でも、とりわけ乾燥果実は、東南アジア、カリフォルニア、地中海諸国、中南米のチリ、ブラジルなどから輸入されており、すでに商品のイメージが確立されている。ボリビア産乾燥果実の今回の対象商品は、自然乾燥を行っており果物そのものの風味があり、食べて見るとおいしいとの評価は受けた。しかし、現在日本の乾燥果実マーケットに出回っている商品とは、味、外見、包装材料、包装の仕方、ラベルの表示などが異なっているため、日本市場への参入は容易でないと思われる。したがい、調査結果を元に、日本市場進出のための改善策をメーカーにアドバイスした。ただし、全く参入の余地がないわけではなく、機能食品、健康食品などのニッチな市場での販売可能性はあると思われる。

 一方、コロンビア特産の食用ほおずきは、日本には未紹介の果実であり、酸味は濃いが多量のビタミンやミネラルを含んでいるので、美容や健康志向にうまく乗れば対日輸出は可能と思われ、数社から引き合いも出てきた。しかし、日本の消費者の商品選択基準は、非常に厳しいので、日本市場進出のためには、味や風味、品質、値段、安定供給保証のほかにパッケージング(包装、ラベルなど)が極めて重要である。

 日本の乾燥果実市場の本格的調査は初めてなので、本調査報告書は他の地域の乾燥果実の生産・輸入販売のオリエンテーションにも活用できるとして、ジェトロから高い評価を受けている。

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